出版社内容情報
桜木紫乃[サクラギシノ]
著・文・その他
内容説明
「東京に逃げることにしたの」釧路の高校を卒業してまもなく、二十以上も年上の和菓子職人と駆け落ちした順子。親子三人の貧しい生活を「しあわせ」と伝えてくる彼女に、それぞれ苦悩や孤独を抱えた高校時代の仲間は引き寄せられる。―わたしにとって、本当のしあわせとは何か?ままならぬ人生を辿る女たちが見いだした、ひとすじの希望。生きることへの温かなエールが胸に響く物語。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年『氷平線』でデビューし、注目を集める。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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柊文庫本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
354
ああぁ、桜木さん、ホントに上手い。無駄なく歯切れのいい文章に、最後まで心臓鷲掴みされた。連作短編を綴るのは北国で生まれ育った6人。でも本当の主人公は、その真ん中にひっそりと生きる「順子」。「お父ちゃんのこと、好きになっちゃったから」「わたし今、すごい幸せ」「いつも直子の幸福を祈ってます」そんな順子に、ラスト直子がかけた言葉「(順子は)誰も傷つけてはいないよ。みんな自分で選んで、自分で決めてるんだから」彼女たちはみな蛇行する川、海に向かって流れていく。個人的桜木さんベストかも。2017/07/20
しんごろ
265
高校の図書部の友達を中心とした女性6人の連作短編!年代を変えながら女性の人生、考え、幸せを考えさせられる物語でしたね(^^)順子本人が幸せならそれでいいと思うし、そこまでの過程で共感できない人もいてもおかしくないし…幸せの価値観は人それぞれだね。登場してくる女性たちも前に進んでいくんですが、どこか切ないんですが、また再読したくなる物語です。再読するならBGMにたむらぱん『ノウニウノウン』がいいかな(^^;)【サイン本】2016/07/21
おしゃべりメガネ
222
文庫にて3年ぶりの再読でした。もちろん桜木さんワールドは健在?で、正直明るめの話ではないのですが、この独特な陰鬱ともいえる雰囲気を期待して読んでいる自分がいるので、ある意味満足しています。6人の女性の視点から繋がれていく物語は、あらゆる女性の生きざまをも優雅に綴っています。桜木さんには必須の儚さや悲哀はしっかりとブレンドされており、やはりこの'味'はやめられずクセになってしまいます。25年におよぶ四半世紀のクロニクルは読んでいる側に幸せのあり方、捉え方を問いかけてきているようで、深く考えさせられました。2018/03/25
やすらぎ
204
優しい笑顔や爽やかな風の大切さは、この広い湿原を離れてみないと気づくことが難しいのかもしれない。今のままでも後悔はないし、決めたのは自分。もう戻ることなんてできないし戻りたくもないし。幸福のかたちは人それぞれ。いろんな道がある。夜空に咲く花火のようにバラバラに散ったパズルが一つになることはないけど、遠くてもつながっている。こんなに星が瞬いているんだから。心を捨てて笑うときもある。面倒なときも我慢できないときもある。でもどこまでも転がり続けていれば、しあわせを感じることができる。緩やかに蛇行する川のように。2020/01/30
じいじ
143
本当のしあわせって、なに? を心に問いながら読み進めた。高校を卒業した6人の女たちのその後を、それぞれの目線で綴った物語。キーは、妻子ある中年男と駆け落ちした順子。彼女への関心が形を変えて登場する筋立てが面白い。男との逢瀬、その快楽を男の妻へのヤキモチではなくて、自分への褒美だと思おうとする女心が切ない。紫乃さんのこうした心情描写の巧さは流石です。また、「口に出せる程度の愚痴はノロケだ」など名言の数々は、今作でも冴えている。明日への希望の余韻を残す「女」の物語です。2017/05/08