出版社内容情報
深水 黎一郎[フカミ レイイチロウ]
著・文・その他
内容説明
弁当配達のボランティアで老婆・カエと出会った、大学生の総司。家族を失い、片目の視力を失い、貧しい生活を送るカエは、愛し合いながらも結ばれなかった男との思い出を語り始める。その悲しい恋物語には、総司の人生すら一変させる、壮絶な秘密が隠されていた。衝撃の結末が待ち受ける、長編純愛ミステリー。
著者等紹介
深水黎一郎[フカミレイイチロウ]
1963年、山形県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。2007年、『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。同作は文庫化に際して『最後のトリック』と改題され、ベストセラーとなった。2011年、「人間の尊厳と八〇〇メートル」で第64回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。2015年、『ミステリー・アリーナ』で「本格ミステリ・ベスト10(国内)」の第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナイスネイチャ
226
素晴らしい良作でした。進級レポートの為に独り暮らしの高齢者に弁当を配達するボランティアに参加した主人公。その中の1人隻眼のお婆さんカエの半生を聞きながら戦後の悲しい物語は綴られてました。結末はちょっとびっくりするが温かい気持ちになる作品でした。2016/11/14
しんたろー
172
深水さん二作目。老人向け弁当配達ボランティアをする主人公・総司が、何処にでもいそうな等身大の若者として描かれていて共感できた。単なるお調子者だった若者が老人たちやボランティアたちと接する内に成長してゆく青春ドラマが主軸だが、カエの戦争絡みの悲恋と総司の純粋さが相まって、人情ドラマとしてもホロッとする部分もあって得した気分。残念なのは、もっと深く掘って欲しいエピソードがサラッと終わってしまっている点(杉村女史や沙織)だが、ユーモアがまぶされた文章は楽しいし、終盤のミステリとしての展開は巧みで感心した。2018/04/09
nobby
142
タイトル『美人薄命』に対し、各章題に含まれるのはローマを文字っての“老婆”。なるほどの深水作品、ここから既に先入観植えつけられている。大学生 総司による留年防止にと始めた高齢者配食ドライバーのボランティアを描く物語は全く先が見えない。福祉業界で働く者としての見解は置いといて(笑)主役たる盲目の老婆カエさんの登場から、戦時中の壮絶さや報われなさが主題なのかと感じつつ今いちピンと来ず…それが最終章に入って様々な急展開に唖然!確かに涙こぼれ、ミステリー味わい、ラストで純愛物語と相成りお見事!2017/07/16
タイ子
93
途中までこれってミステリー部門かいな?と思いながら読み進むとなるほど、しっかりミステリーになっておりました。大学生の磯田総司がボランティアの弁当配達で目の不自由なカエ婆ちゃんと出会い、彼女のユーモア溢れる会話と昔の壮絶な若かりし頃の思い出話が彼のいい加減に生きてきた心を少しづつ変えていく。婆ちゃんの話が旧かなづかいになっているので余計昔物語として読まされていくところが作家さんの上手さなんでしょうね。そして、ある日を境にストーリーは思わぬ方向に…。ピュアなラブストーリーかもしれない、総司が好きになりました。2018/02/15
ふう
89
タイトルの意味を追いかけたり、帯にあったミステリーという言葉を意識したりせず、老婆カエと青年総士のやりとりを楽しみながら読みました。人の一生は、表からは見えにくい部分ほど重く深いと思っています。言葉にしにくいし、なかなか分かってはもらえないし。カエの人生も大変なものだったのだと思いながら読んでいたら、最後にその人生とはちがう人生があったと知って、それもまた大変だったのだろうなと想像しました。その人生の物語は、総士だけが知り温めていくのです。総士はなかなかすてきな遺産を引き継ぎましたね。2016/12/13