内容説明
身体のあらゆる部位を必殺の武器となす琉球の武術「唐手」。二度目の「警視庁武術試合」で、保科(西郷)四郎の相手は唐手の使い手に決まった。しかし強さの頂点に迫る中で四郎は「闘うことがこわい」と告白する。骨が砕け、肉が潰れ、魂が軋む死闘をへて、苦悩の末に下した決断とは―。明治の武道界に嘉納治五郎が起こした革命の物語「天の巻」感動の最終巻。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
1951年神奈川県生まれ。77年、SF文芸誌『奇想天外』にて「カエルの死」でデビュー。89年『上弦の月を喰べる獅子』で第10回日本SF大賞、98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。2011年から12年にかけて『大江戸釣客伝』で第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞、第46回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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姉勤
37
血が熱いまま読み終えた。何故、闘うのか。傷つき、苦しみ、怯え、命を顧みることなく、相手に同等のものを求めてまで。一生に一度、有るか無しかの満ち足りた刻。限界を試し、試させてくれる相手。巡り合えるのは稀。敵ではなく友としてなら尚更。講道館と嘉納治五郎を中心とした武人たちの物語も幕を閉じる。と言うか、それは長大なエピソード・ゼロだった。未完どころか、まだ始まってもいない地の巻の、主人公は前田光世。保科近悳と治五郎と惣角を経て、後半の主人公西郷四郎より、鬼の系譜は前田に継がれ、現代の総合格闘技として生きている。2024/04/04
ぶんぶん
17
【古本屋】遂に、「天の巻」堂々の完結。 サブタイトルは「嘉納流柔術」となっているが、西郷四郎が主人公の小説だと思う。 各戦いに凄い迫力がある、獏さんも言っているが言葉の表現が独特である。 時には雄々しく、時には女々しく、その世界は千変万化。 良いぞ獏流表現、いつまで読めるか、近年亡くなった人の訃報を聞くと、早く各ストーリーを完結してくれとの思いが強い。 自身で行ってる通り、長書きの癖があるのだから、「餓狼伝」「キマイラ」の完結希望。 とにかく「天の巻」は終わった、「地の巻」の始まりを待つ。 2023/10/24
眠る山猫屋
17
駆け足に四巻。唐手使いたちとの死闘が描かれる中、警視庁武術試合が再び開かれることに。様々な想いを抱えた男たちがぶつかり合う。中でも四郎と東恩納寛量の死闘は圧巻。流派もプライドもなく、ただただ目の前の敵に全てをぶつけていく。そんな、柔術が総合格闘技だった時代の物語。熱かった。2015/10/20
Masaaki Kaneda
10
してはないけど見るの好きな格闘技ファン 文字だけでも試合が浮かんでくる夢枕ワールド 伝説の人々の事をより深く知れた作品でした2019/02/14
旗本多忙
4
夢枕 獏さんにハマってた時期があって、自分も空手と剣道をやっていたから、こうしたノンフィクションものには食指が動く。嘉納治五郎が主に書かれているが、実在のそうそうたる武道家も数多く登場している。著者は、ブラジルに渡って柔術を教えた前田光世を書こうと思ったらしいが、前田の登場はいくらもない。続編が出たら更に力の入った作品になるだろうな。男の生き方、武道に興味ある方にはぜひお薦めの小説ですね。1~4巻