内容説明
高校を卒業した未芙由は上京し、親戚の鹿島田家で暮らすようになるが、家族がどうも変なのだ。顔を合わせることもなく、皆、てんでんばらばら。しかし、お互いを嫌悪しているわけではない。ではこの妙な違和感は何なのか?やがて未芙由はその正体に気付く。それは、彼らの平穏な日常を変容させるものだった。―「幸せ」を望むのは罪なのか。物語の最後に残るのは「崩壊」か「誕生」か。直木賞作家が描く、人間の欲と真実。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務を経て、88年、『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞の優秀作になりデビュー。96年、『凍える牙』で第115回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
468
本書は元々は新聞か雑誌に連載されていたのだろうか。そんな風に思うのは序盤から中盤に至るまでの構想が一貫性を欠くからである。プロローグは未芙由の物語に始まり、作品全体としても未芙由を主人公語られる。それでは、第一章の杏子と雄太郎の物語は何なのだ。また、登場人物がやや未整理であるためか、未芙由に感情移入しにくく、強い共感も持ちがたい。あるいはそれは未芙由が全てにおいて受動的に過ぎる故であるのかも知れない。だからこそウツボカズラなのか。しかし、彼女はウツボカズラほどの個性にもまた乏しいのであるが。2021/02/11
美登利
115
読んでいて感じた既視感。あ、そういや深夜ドラマで何話か見たんだったわ。志田未来ちゃんが冴えない田舎娘で親戚筋の豪邸で家政婦みたいな役をしてて、父親くらいの歳の旦那さんと関係を持ってしまうシーンがあった。原作に突然出てくるそのシーンで気がつくという。今どき家族がバラバラというのはそれほど変でもないと思うし取り立てて濃いストーリーでもないので少し退屈なところもありましたが、なんだか嫌だな〜って思いながらも読ませますね。乃南さん。2017/11/20
ユザキ部長
112
家族を捨てる気持ちはあれど晴れの日に呼ばないわけにはいかない。それでも実父にはこの家に近寄って欲しくない。あまりにも立派な家で、ひどく悲惨な家族だから。いや、誰にも近づかせない。意地でも。終始不穏な間奏曲が頭の中で流れる。2018/02/22
milk tea
96
最初こそ主人公の未芙由の育ってきた環境を思えばこそ、これはシンデレラストーリー?いや、いや。亡き母の従姉妹、尚子を頼りに渋谷の家を訪ねてら思いもよらぬ豪邸だった。ここで幸せになりたいと思うようになる。地味で欲がないように見せておきながら、しっかり計画通り進めるしたたかさ。尚子は若い男と暮らし、尚子の夫は転勤、娘は海外留学、皆んな家から出て行く。気難しい尚子の義母も掌中に納め、めでたく長男と結婚。これで資産は自分のもの。かなりの性悪オンナです。だけどこの先、祖母の面倒見られるのかしらね。2017/07/08
Ikutan
75
母親が病死してすぐに父親が再婚。高校を卒業した未芙由は、居場所を無くし親戚の鹿島田家で暮らすことになる。立派なお屋敷の中でバラバラの家族。鹿島田家にはどこか違和感が。その正体に気づいた未芙由は..経済的に豊かで各々が自由。いやいや鹿島田家のような状態は確かに有りそう。それに対して、徐々にしたたかになっていく未芙由は、常に冷静。達観しつつ、鮮やかに幸せを掴んでいく。彼女がウツボカヅラ?いやいや、女性陣は皆、したたかで恐いねー。ドラマ化で気になっていた作品。期待通り読み応えあるサスペンスでした。2018/09/17