内容説明
やくざの奴隷に成り果てた、かつてのIT長者。本家からフロント企業へと放逐されたチンピラ。身体を壊し、酒が飲めなくなったホステス。若くして人生の敗者となった三人が手を組み、起死回生の大博打を打った。狙いは脛に傷を持つサラ金企業ハピネス。彼らは、ハピネスからブラックマネーを奪い取り、負け犬の烙印を消しさることができるのだろうか。
著者等紹介
馳星周[ハセセイシュウ]
1965年北海道生まれ。横浜市大卒業後、出版社勤務を経て文芸評論家として活躍。96年『不夜城』で衝撃的なデビューを果たし、同作品で第18回吉川英治文学新人賞を受賞。97年『鎮魂歌―不夜城2』で第15回日本推理作家協会賞長篇賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
352
馳星周のノワール小説ではあるが、いつものそれとは幾分趣きが違っている。まず、舞台が新宿歌舞伎町に限らないこ と。そして、中国マフィアが全く登場しないこと。主人公が宮前、稗田、美和、小久保と分散されているために、特定の人物に感情移入しにくいこと。またそのこととも関わって何時もの馳に似ず展開が遅いことなどの特徴が挙げられる。とりわけ、馳に特有の、あのキレのよいプロット展開が見られないのは作品の長さと相まって、やや冗長な感じを与えるだろう。主人公たちの魅力も何時もに比べるとやや薄いか。2021/01/08
W-G
303
馳作品は『ダークムーン』『生誕祭』あたりで追うのを止めていたが、『暗手』でまた再燃してきたので、読んでいない中で一番面白そうなのを読んでみた。上巻読んだだけの印象では、『生誕祭』に近い感触。『生誕祭』よりもややテンションが落ちる気もするが、巻の終わりくらいから盛り上がってきそうな匂いはしている。主人公の1人が元IT長者で、もう1人は元?ヤクザ。こちらの方は『虚の王』の主人公を連想させるものがある。もう1人の女主人公があんまりずるくないのが馳作品では凄く新鮮。下巻で豹変するのか?今のところ満足度高め。2017/06/02
Tetchy
28
元IT会社社長、元やくざ、元№1ホステス、そして消費者金融の渉外担当の中間管理職。ギラギラしている4人が手を組んで大金を奪おうと画策するが、欲望だけで集まった絆は脆く、分け前を4等分することが気に食わない。従って顔では嗤い、心の中では蹴落としてやろうと企んでいる。馳作品の特徴は人生崖っぷちの人間がギリギリの極限状態で這いずり回り、挙句の果てに周囲を巻き込みながらカタストロフィの穴に落ち込み、屍を築いていくのだが、今回は疲弊し、将来に不安を抱えていた者が出逢うことで運命が好転するという意外な方向を見せる。2013/05/26
えみ
22
悪者が悪者からお金を奪う。どちらを向いても悪者しかいない混沌極まる世界を目撃する。人生にもしも敗者復活戦が存在するならば、この小説で描かれているハードでコアなブラックマネーの争奪戦、一発逆転で勝利することなのかもしれない。人生の断崖絶壁に追い詰められた者達の明日を賭けた本気の闘い。体と頭をフルに使い、脅して、賺して、宥めて人を使い、情報を手に入れる。仲間すら騙そうと画策する呆れた連中だけど、表でも裏でも真っ当に生きる事が出来ない生きる事が許されない遣る瀬無さが伝わり憎めない。勝利は誰の手に?結末は下巻で!2020/01/10
だい
8
ノワール作品の巨匠でハードブラックでは右に出るものがいないぐらいの馳星周さんです(笑)私の中では勝手に【ハードボイルド】のジャンルで認識しております。 裏金の強奪を軸にストーリが展開します。 悪徳警官、覚醒剤、ヤクザ。。今回もブラックな展開を裏切りませんでした。2020/06/30