出版社内容情報
数々の孤独死現場を取材してきた著者が直面した現場には、家族やパートナー、社会との関係に苦しんだ「生きづらさ」の痕跡があった──。他の人のように上手く生きられない。現代人が抱えるどうしようもない辛さを様々な角度と視点から探る、著者初のエッセイ。毒親、引きこもり、婚活、女性用風俗、就職氷河期世代……複雑に絡み合う現代の「B面」から、私たちの生き方を考える。
内容説明
年間約3万人がひとりで死ぬ日本の「いま」を追う著者初のエッセイ。「孤独死しても頼れる人がいません」現代人の「寂しさ」の先に見えたのは私の“生きづらさ”だった―
目次
第1章 私が生きづらいのはなぜか(母親と生きづらさ;事故物件に刻まれた「生」の証 ほか)
第2章 私たちを縛りつける「性」(女性用風俗の現場から;婚活戦線で傷つく女性たち ほか)
第3章 いまの時代の生きづらさ(Z世代の繋がり;年収400万円時代の生きづらさ)
第4章 生きづらさを越えて(喪失感が生む生きづらさ;SNS依存から抜け出す ほか)
著者等紹介
菅野久美子[カンノクミコ]
1982年宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経て、ノンフィクションを中心に執筆している。孤独死や男女の性にまつわる多数の記事を扱う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
35
今の時代、よほどの楽天家でもないかぎり、人は生きづらさを感じて生きているのではないだろうか。著者が実践した生きづらさの解消は、モノを捨てる「捨て活」やSNS依存からの脱却など、その多くは自分自身の気持ちの切り替えによって実現できる。一方で、国力の低下による経済不況や無策政治の弊害によって拡大している生きづらさを引き起こす実態は、個人の責任ではない。昨今、孤独死は「孤立死」と言い換えられるようになった。無縁社会を象徴する人のつながりの希薄さや、家計を直撃する光熱費の高騰など、このままでは済まされまい。2023/12/15
踊る猫
33
毎度ながら超テキトーなことを書くが、この著者がこの「生きづらさ時代」を生きる人たちに向ける眼差しに(そして、彼らの「孤独」の正体に肉薄せんと寄り添う姿勢に)どこかチャック・パラニュークやブレット・イーストン・エリスにも似たものを感じる。むろん結果としてできあがった作品は似ても似つかないものではあるが、読み進めるにつれてこの繊細な著者はあえて自らを黒子に徹し、登場する人々たちの声を聞き取ろうとしていると思った。だから暑苦しさもなくそれでいて「薄口」という印象もなく、あとに確かな滋養や渋めのポジティブさを残す2024/04/20
*
15
【私は今日もまた画面の「遠い世界のあなた」の日常に触れるのだろう(P.123)】孤独死や性の現場の取材を通し、出会う人々と自身の「生きづらさ」に向き合う。SNSのように、自分らしさを表現できる技術で「個」が強くなった。でも、その反動で複雑さは排除され「孤」も濃くなる。その結果が、同調圧力の高まりなのだろうか▼自分にとっても、外界とのミスマッチな繋がり方、あるいは生存戦略を見直す機会になるかもしれない。2023/09/01
Erika
2
孤独死、SNS依存、毒親、セルフネグレクトなど、生きづらさについて様々なテーマで書かれている。「社会課題の自己啓発的解決」が進むとそこから予測される将来は地獄絵図だという。物価上昇と国民負担率の増加で生活が苦しい中で、何とかその状況に適応するしかない現状がある。その為、巷では節約本が溢れ「社会が変わらないなら自分達が変わるしかない」という思考に陥ってしまうという。実験動物のマウスが例に挙げられていたが、まさにその通りだと思う。水と餌が減らされ与えられた条件の中で必死に試行錯誤する人間の将来が見えた。2024/12/27
でにす
2
ノンフィクション作家のエッセイ。取材してきた対象と自分自身の体験を掛け合わせた内容からこの時代の生きづらさを述べる。 ネグレクトやイジメの経験をバックグラウンドに、取材対象に親近感をもつ著者にとって、この時代を少しでも生きやすく過ごすために捨て活と共感できる人間関係が紹介される。 孤独死について、著書を読みたくなった。2023/12/03