出版社内容情報
高永家の子供たちは四兄妹。中学の新米教師で正義感の強い長男、いわゆる美容男子である高三の次男、スカートを穿いて進学校に通う高一の三男、いちばん如才なく兄たちのことを観察している中二の末娘たちだ。父親は再婚しているけれど、離婚した「ママ」も気ままに子供たちに会いに来る。そんなフクザツな家庭で過ごす四兄妹が夏休みを経て、新学期の「9月1日」を迎えるまでを描いた青春家族小説。9月1日、それは学校に通う子どもたちにとって、とても大きな意味をもつ日――。
【目次】
内容説明
父親と、三人の「母親」がいる高永家。そんな一家の四兄妹が夏休みに知った、痛み、喪失、孤独。静かな感動が胸を満たす青春家族小説。
著者等紹介
椰月美智子[ヤヅキミチコ]
1970年神奈川県生まれ。2002年『十二歳』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。07年『しずかな日々』で野間児童文芸賞、08年坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で神奈川本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で小学館児童出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
139
いつから?そんな日だったなんて知らなかった。知りたくなかった。私にとって9月1日は、亡き父がシベリア抑留から帰還した日なのだ。それはそれとして・・あぁ、椰月さんだなぁって、そこかしこに漂う椰月さんの空気感が好い。父親1人と母と言う存在が3人。4兄妹の高永家の夏休みの話。長男・善羽とは合わないかもの私だが(汗)4人の少しずつが「家族ってこんなだよなぁ」と思わせてもくれる。3人の母たちのスタンスも好いなぁって感じた。2025/09/15
のぶ
83
四つの章で四兄妹をそれぞれの主人公にして描いている作品。四人はそれぞれ違う価値観で生きているけれど、全員心が優しくてまっすぐだ。3人の母と父はそれぞれの立場から子どもたちを支えていて、すごく素敵な大人である。多様性に対する考えもそれぞれだ。それぞれの世代から生きづらさのようなものが感じられて、それが読み手に伝わって来る。生死感も描かれていて、椰月さんのメッセージも受け止める事ができた。この本を偶然9月1日に読むことができたのは何かの縁かもしれない。2025/09/01
花ママ
57
離婚した生みの母親をママと呼び、父方の祖母はおかーさん、父親の再婚相手を玲子ちゃんと呼ぶ高永家の四兄妹を1人ずつ取り上げながら、物語が進行していく。中学校教員で、マッチョで正義感にあふれる長男よし兄、家族や友人に優しく接する美容男子次男の智親、スカートをはいて高校に通うようになった三男武蔵、しっかり者で兄たちのこともよくみている長女の民、中学校生活で大きな悩みを抱える。この4人の兄妹が夏休みを経て、9月1日新学期を迎えるまでが描かれている。一見複雑な家庭だが、家族が皆思いやりを持ち、優しさに溢れていた。2025/08/30
シャコタンブルー
54
9月1日にそんな悲劇が積み重なっているのは知らなかった。夏休みで中高生は心身とも成長するが同時に自我が芽生え心の不安は増大するのかも知れない。各章が四兄妹それぞれの視点から描かれていて、性格の違いや互いのことをどう思っているのかを知り興味深く読めた。誰もが不安や悩みを抱えながら学校に行きそして高永家に帰ってくる。毎日の何気ない家族や友達との会話が誰かの救いとなっているのかも知れない。今を懸命に生きている人へのエールのようにも思えた。「おもしろくなきゃ損だ。ワクワクしなきゃ損だ」同感。2025/09/11
kei302
50
9月1日の朝を楽しみに迎えることができるのは当り前ではない。一昔前は宿題が終わっていないから学校行きたくないネタだったのになあ。善羽・智親・武蔵・民の四兄妹が新学期の朝を迎えるまでの夏の出来事。優しくてよく気のつく智親の自然な振る舞いがとてもよかった。武蔵の章が深い内容で読み応えがあった。2025/09/16