出版社内容情報
鳴神冴良が営むお弁当店「ききみみ堂」には、特別な「しふく弁当」がある。依頼主の事情や想いを仕立てた、心を届けるお弁当だ。「育休明けの仕事と家庭の両立に悩む同僚へ、そっと応援する味を」「新しい生活になじめずひとり落ち込む大学生に、元気をくれる一品を」「亀裂の入った親子の仲を修復するお弁当を」。冴良が作るやさしい味わいが心に染みわたり、食べる人の背中をそっと押す。ひと口食べれば、心がほどける。 あなたの想いを、お弁当に詰めて届けます 。小さな包みに込められた、あたたかな絆の物語。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayuri
35
依頼主の話に耳を傾け想いをお弁当に詰めて届ける。まさに“食べる手紙”。なんて素敵なお仕事だろう。「みちを拓く鮭弁当」「星を探すハンバーグ弁当」「咲きそめる花づくし弁当」「思いさますローストビーフ弁当」「虹を架ける幕の内弁当」それぞれのお弁当に込められた想いが優しく心に染み渡っていく。贈る人、受け取る人、お弁当を作る料理人の冴良。みんなの思いがひとつになった瞬間、温かさで満たされた。随所に刺さる言葉がたくさん散りばめられていて、読み進めながら身体がふうわりと楽になる。手触りのいい紙質が使われたカバーも素敵。2025/07/03
信兵衛
22
多くの人たちを励まし、支える料理ストーリーを書き続けている冬森さんが今回題材にしたのは“お弁当”。 といっても、何処ででも買えるような弁当とはちょっと違う。 届け先である相手へ依頼人の想い(応援や励まし)を届ける特別なお弁当、名付けて<しふく弁当>、という次第。 なお、「しふく」とは「至福」と思ってしまいがちですが、それは誤り。さて、どんな漢字が当てられているのでしょう。それは最後まで読んでのお楽しみです。2025/07/09
えみちゃん
20
綺麗でおいしそぉ~な表紙に惹かれて手に取ったら大好きな冬森灯さんの新刊ということで迷わず購入♬笑っ。今回は小さなお弁当屋さん「ききみみ堂」が舞台となります。まずそのコンセプトが奮ってます。贈りたい相手のことを語り、送り主の想いをお弁当に込めてお届けする・・なんて素敵なんだろう。そんな繊細なお弁当を作る料理人(冴良)が奮ってます。真っ赤な髪に黒ずくめ。耳にはピアスがいくつもついている!170センチ近くある身長の女性が突然訪ねてきたら正直驚くよね。笑っ。ところがその見た目から想像できないくらい繊細で滋養に2025/06/23
よっち
16
鳴神冴良が営むお弁当店「ききみみ堂」にある特別な「しふく弁当」が。依頼主の事情や想いを仕立てた心を届けるお弁当が心を癒やしていく連作短編集。双子の育児に疲弊しながら育休明けの不安を抱える主婦、大学デビューに失敗した孤独を深める大学生、大好きな人と一緒に大切な日を過ごしたい保育士、同居生活の中で彼と価値観の違いを痛感する女性、亀裂の入った親子関係など、真摯に向き合う冴良が依頼者の想いを聞いてそれを汲み取りながら、心をほぐす優しくて美味しそうなお弁当が、新たな希望をもたらすそれぞれの結末がとても印象的でした。2025/07/29
アリスとアニー
8
美味しそうな食べ物を題材とした小説と言えば冬森灯さん。今回は依頼者の想いが込められたオーダーメイドのお弁当「しふく弁当」をつくる小さなお弁当店「ききみみ堂」が舞台です。見た目が派手で少し無愛想だけど素敵なお弁当をつくる店主の鳴神冴良をはじめ、魅力的な登場人物がたくさん。最終話はフィナーレに相応しく、これまでの登場人物のそれぞれに活躍の場があり、伏線回収ありと読み応えのある内容でした。『聞こえぬ声に耳を澄まし、見えぬ未来に目を凝らす、あなたに幸あれ』は「ききみみ堂」のモットーのような素敵な言葉で大好きです。2025/07/13