出版社内容情報
鳴神冴良が営むお弁当店「ききみみ堂」には、特別な「しふく弁当」がある。依頼主の事情や想いを仕立てた、心を届けるお弁当だ。「育休明けの仕事と家庭の両立に悩む同僚へ、そっと応援する味を」「新しい生活になじめずひとり落ち込む大学生に、元気をくれる一品を」「亀裂の入った親子の仲を修復するお弁当を」。冴良が作るやさしい味わいが心に染みわたり、食べる人の背中をそっと押す。ひと口食べれば、心がほどける。 あなたの想いを、お弁当に詰めて届けます 。小さな包みに込められた、あたたかな絆の物語。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
machi☺︎︎゛
74
ここ最近で読んだ食べ物系の本の中でダントツに良かった。ききみみ堂という小さなお弁当屋さんでしふく弁当を作る冴良。お弁当を依頼した人の人物像、その人の人生を聞いた上で作られるその人のためのしふく弁当。冴良の作るお弁当は町でも有名でファンも多い。しふく弁当を食べて人生やり直す者、大切な事に気付く者、新しい一歩を踏み出す者、そして冴良自身も逃げてきた過去と向き合い新しい未来への一歩を踏み出す。出てくる料理も美味しそうでギチギチに色んなおかずが詰められたお弁当が食べたくなった。2025/08/11
星群
72
初読み作家さん。何とも可愛くて美味しそうなお弁当。ペペロンチーノ風のひじき煮、具沢山卵焼き、数え出したらキリがないですね。涎が出そう、夜に読むのは危険かもしれません。飯テロですな。強烈な個性を放つあいこさんななえさん、ちづさんを筆頭に多彩な人々が脇を固めます。一冊限りにするのはもったいない。ぜひとも、シリーズ化して欲しい。あと、やっぱり〝しふく〟は至福も含んでると思います。2025/08/05
さちこ
53
しふく、仕えるに覆うと書く。お道具を包むために専用にあつらえる容れ物。大切な想いを包みこんだ。2025/08/07
えみ
47
言えないだけで日々皆なにかに耐えている。なにかと戦っている。発露する不安、滲み出る苦悩…人に伝えることを躊躇うような心の声に耳を傾け、その人のためのその人が想う誰かのための完全オーダーメイドのお弁当。ききみみ堂の“しふく弁当”で心もお腹もいっぱいにして…。想いが詰まった見た目も味も一級のお弁当、本当にあったら食べてみたいと思ったし、自分が贈ってもらえたら、大切に想われているその気持ちだけで胸いっぱいになりそう。幸せで満たしてくれるお弁当。なんて素敵なんだろうと憧れる。どんな贅沢より、心に届く食こそ口果報!2025/08/08
Karl Heintz Schneider
39
「しふく弁当承ります。あなたのお話を聞かせてください。贈りたい方のことを聞かせてください。あなたの想いを込めてお弁当にお仕立ていたします。」ききみみ堂はデリバリー専門のお弁当屋さん。自分のためではなく食べさせたい誰かのために作ってもらったお弁当を届けている。それはまさに食べる手紙。人の想いを人に伝えるお弁当。「ききみみ堂」と名付けた理由のひとつは誰かの想いに真摯に耳を傾けるため。もうひとつ「しふく弁当」の「しふく」。想像していた意外にもうひとつ意味があった。なるほど面白い!やっぱり日本語は面白くて美しい。2025/08/16