出版社内容情報
31歳の松谷遼平は会社の懇親会で8歳下のアルバイト・隠善つくみと初めてまともに話すと、奇妙な感覚に襲われる。……この人は俺に会いに来たんじゃないか? 遼平は幼少期、生死の境を彷徨ったことがある。その記憶とつくみとが不思議と?がってくる。遼平がつくみと結婚すると、別れた恋人の友莉が失踪してしまう。その捜索によって知った関係者の出自や記憶が大分のある地域に奇妙に収斂し、人間関係が因縁めいた連環の形となっていく。やるせなさ、ずるさ、だらしなさが随所に描かれながら、どこまでも澄んだ読み心地がする物語。
内容説明
松谷遼平は会社の懇親会で8歳下のアルバイト・隠善つくみと初めてまともに話すと、むかしからの知り合いのような奇妙な感覚に襲われる。―この人は、俺に会いに来たんじゃないかな…。異常とも思える人と人との奇縁、土地の記憶の連環―。「自分とは何者なのか」を追求しつづける白石文学の金字塔!
著者等紹介
白石一文[シライシカズフミ]
1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第二二回山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で第一四二回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
169
白石 一文は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 タイトルからイメージしていた内容とは異なりましたが、予想外の展開で楽しめました。つくみのような女に惚れられてみたい。5月は、本書で読了です。 https://www.futabasha.co.jp/book/97845752481660000000 【読メエロ部】2025/05/31
道楽モン
45
安定の白石一文と思いきや、本作は予想を裏切る展開の連続で、期待以上に楽しめた。そもそも私は白石作品をずっと読み続けているので、単に面白いとか否かの感想だけで白石一文を片付けられないことを知っている。エンタメ作品としての基準は常にクリアしてはいるが、読者の人生を変えるような弩級の衝撃作も無いし、今後も期待はしない。では何故に読み続けているのかというと、等身大の矮小さを持つ登場人物に共感しつつ、不可解あるいは超常現象的な物語に身を委ねる快感を読者に保証してくれる作家であるからだ。心の震度は3程度が心地良い。2025/06/04
toshi
11
最後まで興味深く読めたけれど、内容は理解できないまま。 そもそも主人公は誰?? どの話がメーンストーリで、どれがサイドストーリ? あれもこれもみんな途中で終わってしまってすっきりしない。 やっぱり白石一文は鬼門。2025/06/05
遠い日
4
奇縁、因縁。運命、巡り合わせ。猫神信仰の守護か、呪縛か? 紐解けば複雑に絡み合っていた人間関係に、抗いようのない必然を感じる物語。 先が全く読めず、転々する事態に目を見張るばかり。遼平とつくみの定めをエピローグまで読み終えて初めて理解できた。 人生のままならなさより、その定めの堅固さに、生かされてきたことのありがたさを見る思い。 なんという不思議。人ひとりが生きることの意味はあるのだ。2025/06/08
ぶんぶん
4
謎の女「ツクミ」その正体がかつて命を賭して彼の命を救ってくれた猫というフリはふむふむと。 でも展開はイマイチしっくりと受け入れ難くこの違和感が最後まで拭えずでした…。2025/04/28