出版社内容情報
奥多摩の、太古から神を祀ってきた霊山・御嶽山の上にある村。そこにある神官屋敷は浅田氏の実家である。彼が少年だったころ、美しい伯母から聞かされた怪談めいた夜語り。それは怖いけれど、美しくも哀しく、どれも引き込まれるものばかりだった。これら神主の家に伝わる話を元に脚色して書かれた短編を編み直し、単行本未収録作品「神上りましし諸人の話」(あとがきにかえて)と、書き下ろし作品「山揺らぐ」を加え、完本とした永久保存の決定版!
内容説明
書き下ろし短編と単行本未収録短編を加え、浅田版「御嶽山物語」遂に完結。いにしえの神気を漂わせ、八百万の神々が遍満する奥多摩にある御嶽山が舞台の極上の連作短編集。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞および司馬遼太郎賞を受賞。08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、16年『帰郷』で大佛次郎賞を受賞。19年菊池寛賞、20年日本歴史時代作家協会賞を受賞。15年には紫綬褒章を受章した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
194
浅田 次郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。10年前の作品に、「神上りましし諸人の話」(あとがきにかえて)と、書き下ろし作品「山揺らぐ」を加えた完本こと新装版、こういう作品を出版するということは、新作を発表するのが厳しくなっているのでしょうか❓ https://www.futabasha.co.jp/book/978457524746600000002024/08/23
タイ子
92
奥多摩の霊山・御岳山。ここが浅田次郎さんのお母様の実家であり彼が少年の頃にここで過ごしたひと時、美しい叔母が子供たちに聞かせる夜伽話。本書は完本なので前作の話+書き下ろし作品を含めての物語。御岳山全部が神なのだと本書でも書かれている通り、少年たちが聞く話は地上で聞くと恐怖物語になるかもしれないが、御岳山で起こる全ての事象は神様のなすべきことと思えば、不思議にも清々しささえ覚えてしまう。関東大震災、伊勢湾台風など自然がもたらす災害もあれば、戦争に命を捧げた兵士たちの魂。「長いあとがき~」が印象的。2024/09/10
たいぱぱ
74
美しく哀しく、そして神々しいまでの怪異譚。浅田次郎さんのお母様のご実家・武蔵御嶽神社に伝わる逸話を美しい伯母さんが寝物語に聞かせてくれる。2014年の発刊された本作に、他の短編集に収められた作品や未収録作品、書き下ろしをプラスした『完本』として再刊行。大好きな作品が雰囲気抜群の表紙にも刷新され最高の気分。怖い話、不思議な話の中に神の気配を感じ背筋が伸ばされる感覚がある。こんな感覚にさせてくれる作品にはなかなか出会えない。何かを頂けるのがご利益じゃないよ。何も起きないのがご利益。簡単な様で辿り着けない境地。2024/09/15
ケイト
71
書き下ろし「山揺らぐ」は、関東大震災の時の人々の感情の揺らぎを描く。あとがきと兼ねた「神上がりまし諸人の話」は、連綿と続く家族の物語。ジロー少年のアイデンティティを造り上げた伯母の寝物語。自然の中で人は生かされているだけのちっぽけな存在。『何かをいただけるのがご利益じゃない、何も起きないのがご利益』この言葉は胸に刻んでおこう。御嶽山の自然描写が素晴らしくて、映像が脳内で何度も再生された。2024/09/06
はにこ
68
この本の世界観、好きだわ~。ホラーっていうんじゃないけどちょっと怖い、でも神聖。そんなお話達。現代のようにガチャガチャした時代じゃなくて、もっとシンプルで自然に人間が近かったころの話。昔は、こういう不思議な話を聞かせてくれる人がいたけど、今は居なくなったなぁ。浅田先生のこの作品は、そんな時代の中で宝物だなと思った。2024/11/25