出版社内容情報
加速度的に発展するAIによって、人間の就く職が減少することを憂いた人々が機械の打ち壊し運動を起こす最中、首謀者と関わりを持つ一人の女子学生が機械を抱いて海に飛び込んだ。彼女はなぜ、機械と心中まがいの行動に至ったのか――? 絶えず変化していく世界を、その中に生きる人間を、変わらずに愛することが出来るかを問う、慟哭のシスターフッドSF!
内容説明
2044年、技術革新に伴う人間の雇用の減少を憂いた機械の打ち壊し運動の最中、暴動の首謀者と関係を持つひとりの女子学生が機械を胸に抱いて海に身を投げた。事件の真相を追ううちに明らかになる、隠された悲しき真実とは―?
著者等紹介
新馬場新[シンバンバアラタ]
1993年神奈川県生まれ。明治大学法学部卒業。2020年『月曜日が、死んだ。』にて第3回文芸社文庫NEO小説大賞を受賞しデビュー。2022年『サマータイム・アイスバーグ』で第16回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
235
初読みの新鋭男性SF作家・新馬場新さんが2040年代を舞台に描き深い悲しみに心が引き裂かれる近未来SF百合小説。AIとロボットの発展により人間の職が脅かされる社会で機械打ち壊し運動に踏み切る若者たち。ヒロインの女子大生・千鶴は裕福な家の同級生の女子・悠と出会って彼女に友情以上の感情を抱き始めるのだが幸福な時間は長く続かず二人の行く手には非情で過酷な運命が降りかかるのだった。本書で思うのは、あまりに酷すぎる最低最悪の両親の人間性欠如の仕打ちに呆れ果て反吐が出ましたね。テセウスの船が人の問題になる残酷な未来。2023/09/12
小太郎
40
読み始めて捗らないなと読んでいたんですが、後半になって話が見え始めてからは一気読み。SFと百合系にこんなに親和性があるように感じるのは何故だろう?話としては舞台は近未来の日本、AIが大幅に社会インフラとして欠かせないものになっている世界でアンドロイドと共に海に飛び込んだ千鶴の心中考。まず世界観がしっかりしてリアリティが感じられます。それに若干ステレオタイプには思えますが登場人物の心象がキッチリと描かれているのが素晴らしい。人間と機械の境界は?というテーマと共にとても切ない愛の話になっているのが良い!★42023/11/15
よっち
37
加速度的に発展するAIにより人々が仕事を奪われ、尊厳を求めてネオ・ラッダイト運動が引き起こされる近未来。そんな中、テロの首謀者と関わりを持つ女子学生が機械を抱いて海に飛び込むシスターフッドSF。組織に関与していたことは認めながらも、逮捕理由となった器物破損に関しては頑なに否定した千鶴。孤立気味だった彼女を認めてくれた親友・悠を襲った悲劇。冷ややかやな目で見ていた悠の彼・有村の活動になぜ関わるようになったのか。千鶴の真摯な想いはどこまでも親友のためにあって、真意が明らかになってゆく結末がとても印象的でした。2023/08/22
ぽてち
30
今から約20年後の近未来が舞台。AIが実用化され、テクノロジーも高度化したが、人々の暮らしは豊かになったとはいえない。機械に仕事を奪われ、ネオ・ラッダイドと呼ばれる反機械運動をする者もいた。本書の主人公・奥平千鶴は22歳の女子大生。彼女はネオ・ラッダイド運動に関与し、1体のヒューマノイドを抱えて海に飛び込んだ容疑で逮捕された。彼女はなぜそんな運動に関わったのか。事件から時間を遡り、彼女の人物像を浮き彫りにしていく。SFだが、ミステリーでも、青春小説でもある。そして何より究極のシスターフッド小説なのだ。2023/08/18
ほたる
13
AIと機械が大半を占めるようになった世界で変わらないものがここにある。現実でも徐々にヒトの仕事が取って代わるようになってきているが、そんな世界でヒトはどう変わらずにいられるか。千鶴と悠の関係からそれを筆致に描き、最後の章で明かされた真相と語られたことに何とも言えない気持ちになった。読了後に表紙を見返してうわ……と驚かされている。ちょっとしたミステリになっていてその謎が解かれたときに最高のシスターフッドSFとして完成されるのがとても良い。2023/08/27