出版社内容情報
育たない胸に、どうしてこんなに悩んでいるのだろう。いくつ年を重ねても、いつも人生に自信を持てない。たかが胸なのに。されど、胸――。生きづらい世の中との隔たりをやわらかく溶かす珠玉の小胸小説。『ブラ男の告白』『EあるいはF』『授乳室荒らしの夢』『胸は育たない』の4篇を収録。
内容説明
「EあるいはF」推しの俳優がまさかの結婚発表。相手は元グラビアアイドルで、胸のサイズはEかF。Fだけはダメなの…Fという記号は私と推しの大切な思い出なのに。無職Aカップの私を悩ますFの存在をどうにか払拭しないと、もう前に進めない!「ブラ氏の告白」「夜、トレンチコートの中にブラジャーを着けた男が出る」というブラ氏の噂を聞きました。もしかして、それは夫かもしれないし、私かもしれない。ブラジャーの存在が、高齢夫婦の私達の人生を大きく変えるのでしょうか―。ほか「授乳室荒らしの夢」「胸は育たない」の二編を収録。
著者等紹介
佐々木愛[ササキアイ]
1986年生まれ。秋田県出身。青山学院大学卒。「ひどい句点」で2016年にオール讀物新人賞を受賞。19年、同作を収録した『プルースト効果の実験と結果』でデビュー。他の著書に『料理なんて愛なんて』がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
91
その悩みの深さはよくわからないけれど、主人公たちのどんどん深みにはまっていく様は痛くもあり愛しくもありでした。甘酸っぱいでなくほろ苦い乙女の物語でした。2023/09/06
やも
84
平らなおっぱい、EかFか議論されるおっぱい、昔は形のよかったおっぱい、女みたいなおっぱい、母乳も出ないのに授乳室に通うおっぱい、これから育ちたいおっぱい、触られて形を変えるおっぱい、左右の離れたおっぱい…。世に1つとして同じおっぱいあらず。独自路線だねー読ませてくるねー。自虐と優しさと切なさの塩梅が素敵。文学と青春の塩梅と言ってもいい。おっぱいがキーワードなのに、いやらしさはない。むしろ読み終えたあとは爽やかさまで感じる。ちょっと石田夏穂さん味も感じた。どのおっぱいも毎日を生きてるのだ。おっぱいに幸あれ。2023/06/17
bura
80
読み友さんのレビューを読んで。短編5作、すべて女性のバストの悩みに関わる物語。推しを奪った女のバストが大きいことで豊胸手術をするべきか悩む女性、60代の女性のブラジャーを通した「老い」の中の妄想、女子高生が学校のプールサイドで見てしまった先輩の大きく美しい胸へのコンプレックス等々。女性の胸に対する様々な思いがギッシリ詰まっていて、男の私には太刀打ち出来ないディープな世界でした。2023/06/27
萩
57
胸が小さいことなんてささやかな悩みだ、と思っていた私はなんと傲慢だったのだろう。小バストに悩む主人公の4短編集。『EあるいはF』→推しがグラビアアイドルと結婚。Fカップの女だけはやめてくれ。『ブラ氏の告白』→トレンチコートの中はブラジャーだけの不審者発見。『授乳室荒らしの夢』→授乳室しか居場所がない私。『胸は育たない』→好きな人の好きな人はバストの美しい人だった。総括:文章自体は瑞々しい感性を感じて好感触だったが、物語によって玉石混交感あり。『胸は育たない』がダントツで良く、次いで『EあるいはF』。2023/07/10
sayuri
55
胸に纏わる四話収録の短編集。たかが胸、されど胸。よほどの胸フェチでない限り、そうそう他人の胸に関心はないと思うけれど、小胸に悩む本人にとっては人生にまで影響を及ぼす重大ポイント。小胸がコンプレックスとなり、生き辛さまで抱えた彼女達の思いは切実だ。"F”に拘る女性を描いた一話『EあるいはF』と最終話の『胸は育たない』は彼女達の必死さと切なさに愛おしさが込み上げる。二話『ブラ氏の告白』ブラに拘る小太り夫婦の異様で奇妙な世界観に何度も噴き出した。極限の生き辛さを描いた三話『授乳室荒らしの夢』の結末はグッと来る。2023/03/07