出版社内容情報
天才錠前師は盗賊を続けるか、パン屋になるか――。友に放った一発の銃弾が男の運命を変える。どちらの世界の人生を歩んでも結末は、ただひとつ!? 奇妙な並行世界ミステリー、前代未聞の衝撃作が登場!
内容説明
天才錠前師の錠二は元パン屋で盗みのパーフェクト・プロデューサーである太陽に出会い、彼のチームに参加することに。悪党からしか金を盗まない太陽のチームは完璧な四人組になりつつあった。だが、錠二は太陽にありもしない横領疑惑を向けられてしまい、太陽を撃ち殺そうとする…。その瞬間、世界は“銃弾が命中した世界”と“動作不良で銃弾が発射されなかった世界”に分かれてしまう。太陽に成り代わりチームのボスになる錠二、太陽とともに足を洗ってパン屋開店を目指す錠二。義賊とパン職人、正反対の並行世界を生きているはずなのに、運命はやがて交わることに―。結末はそれでも一つ!?奇妙な人生の並行世界ミステリー。
著者等紹介
上田未来[ウエダミライ]
1971年山口県生まれ。関西外国語大学卒。「濡れ衣」で第四一回小説推理新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mint☆
106
自分の人生、あの時選んでいなかった方を選んでいたら今はどうなっているだろうと考えることがある。主人公の錠ニはあることがきっかけで泥棒稼業のボスとパン屋経営の2つのパラレルワールドを生きることになる。もちろん本人は気付かない。交互の世界が語られ、こちらはたまに混乱するけれど、どちらもどうなっていくのか目が離せない。あの老人は何者だったのだろう。彼ももしかして平行世界を生きいてそれに気付いたらのだろうか。#NetGalleyJP2023/01/22
えみ
62
いくら別の人生を歩んでみたかった!と思ったとしても、さすがに同時進行は遠慮したい。二つの世界を同時に生きる並行世界にもし落とされ、まったく違う道を歩んできたとしても最後に融合されて一つの世界に集約されるとしたなら…。強盗とパン屋。何とも言えない奇妙な二重人生を不器用に歩んでいく、訳あり人生真っ只中の錠二。どちらの世界も裏切りと殺戮の険しい人生が待っていることは間違いない。ただ、どうせ同じ道ならば、少しでも愛ある道がいい。盗みのために多くの鍵を開けてきたその手で、希望という扉の鍵を開けることはできるのか。2023/02/27
ゆのん
62
ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界ー並行世界・パラレルワールド。物語は主人公の並行世界を描いており、読者だけがその2つの世界を経験出来る。1つだった世界がある時点で2つになり、最後は1つに戻る。戻った世界はどちらの世界なのかー大切なものがある世界か、大切なものの無い世界か。運命に弄ばれている様な主人公が出会う青年。名前は『太陽』。太陽の周りをクルクル巡る世界、太陽の無い世界。主人公にとってどちらが本当なのか…。ページが進む毎にスピード感と緊張感が増してゆき一気に読んでしまう。2022/12/31
オーウェン
52
人生をやり直せるならと並行世界に入る僕。 現在の窃盗団か、パン屋になるかの2択。 この2つの世界をそれぞれ描いていくのだが、ノワールとパン屋という世界。 次第に両方に関わってくる人物が現れ始め、一触即発のピンチに。 窃盗のプロなどから殺し合いにもなるのだが、問題はどちらに転ぶか。 つまりハッピーエンドかバッドエンドしかこの形ならないわけで、その意味で驚きはなかった感じのラストだった。2023/04/16
うまる
37
待望の新作は並行世界の物語。特徴的なのは、分岐した話に対してそれぞれの結末ではなく、いずれ分岐した世界が合流するところ。盗賊団のボスとパン屋という全く違う立ち位置になるにもかかわらず、キーパーソンやキーワードが徐々にリンクしてきて、奇妙な運命を感じらるのが面白かったです。最終的にどちらの世界線が活きるのかも見ものでした。デビュー作の素晴らしさを考えると、ラストに捻りを期待してしまいましたが、これはこれで、きれいにまとまっていて良かったと思います。また違う人を主人公にしてやってほしいです。2023/02/03