出版社内容情報
六年前、ともに家族を無差別殺人でなくした同級生の小雪が香那の前に突然姿を見せた。犯人・武内譲が拘置所で自殺したため、犯行動機等が不明なままの事件を改めて調べようと誘ってきたのだ。香那たちは事件を追うごとに世代を越えて女性嫌悪にとりつかれた男性達の存在に気づかされる。武内譲が憎んでいたものはなんだったのか。それを知ったとき二人は……。
内容説明
六年前、武内譲は無差別に二つの家族を惨殺し、凶行の動機を明らかにしないまま拘置所で自殺した。遺族となった栗山香那と進藤小雪は、深い傷を負いながら離れた場で生活していた。二人は事件当時の武内と同じ二十歳になったとき再会する。「事件をあらためて調べよう」と小雪に誘われ応じた香那。真相を追うごとに世代を越えて女性への嫌悪で繋がる男の存在に気づく香那たち。武内が殺人を犯す背景は何だったのか、それに触れたとき二人は―。女性憎悪の闇を追う長篇サスペンス。
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
213
これぞ櫛木理宇!って感じで堪能しました。6年前に香那と小雪、二人の家族が無差別に殺害された事件。犯人は拘置所で自殺した二十歳の竹内譲。その犯人と同じ齢になった時、事件の理由を探し始める・・これでもかと明らかになる女性蔑視や憎悪の連鎖。満たされぬ思いは歪んで重なる。そんな血筋や家名など糞くらえだ!譲の背景や系譜に理解はできても赦しなど出来はしない。喪った者は還らないのだ。香那と小雪それぞれの怒りも際立たせて、新たに生きていく事が出来るのは良かった。タッグを組んだ?今道刑事も良い仕事をしたと思う。2019/07/09
🐾Yoko Omoto🐾
166
無差別に二家族を殺めたのち犯人の青年は獄中で自死。そして六年後、青年の身内が何者かに殺害された。一連の事件の背景には一体何があるのか、被害者遺族の香那と小雪、当時事件を担当した刑事の今道が真相を知るべく奔走する。前作の鵜頭川村事件でも感じたが、歴史上の事件や出来事をモチーフに、その事件が起こるに至った経緯を物語に絡めていく構成が実に巧い。男尊女卑、貧困からの人身売買、人権無視など、未成熟な文明の中で常態化していた悪しき現実。作品を通して葬られた歴史の闇を改めて知り言葉を失う。読みごたえのある良書だった。2019/08/15
utinopoti27
163
二つの家族を惨殺し、真実を語らぬまま自死を遂げた男には、世代を跨り受け継がれた黒い血が流れていた・・。本作は、実際に九州地方を中心として行われていた、少女の海外娼館への人身売買「からゆきさん」の風習をもとに、女性蔑視、児童虐待等、ハラスメントの重層構造で構成されている。時代の暗部で辛酸をなめ、虐げられ、果ては無残に命を奪われた女たち。陰惨な男たちの系譜がもたらした現代の惨劇は、まさに「からゆきさん」の呪いなのかもしれない。ミステリとしては消化不良の部分もあるが、作者らしさ全開の作品は読みごたえありだ。2019/10/29
yumimiy
145
6冊目。話がとっ散らかり過ぎて専ら整理整頓に苦労し疲労困憊、そういう意味でも非常に恐ろしい小説だった。必死の整理整頓で出た粗大ゴミは、身勝手な男ども。なんなの?この狂った思考、理解不能だ。まあ、自分にも落ち度はある。それは「からゆきさん」なる言葉も存在も知らなかったからだ。戦後のパンパンさんやジャパゆきさんなら知ってる。何れにせよ少女を売った金で家族は飲み食い笑い生きる、とんでもない黒歴史だ。先祖にからゆきさんがいたから、女は恥と代々に渡り女を憎む一族、本末転倒だ感謝しろ!鶴巻介護士の動機と目的が分からん2023/05/22
ごみごみ
145
犯人の生い立ち、家族の過去、男尊女卑が罷り通っていた時代背景が浮かびあがってくるにつれ、なんとも言えない重苦しい読書になった。被害者である女性が己の中の怒りを自覚し、許容や赦免ではなく「許すことはできない」という答えにたどり着いたことがせめてもの救い。理解できたとしても、とうてい納得できることではないだろう。ぬるくゆるやかに流れる黒い川、浄化される日はくるのだろうか?2019/08/03
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