内容説明
日下雄征は旗本の次男坊、気ままな部屋住みの身だ。凛として色気のある芸者・鶴次と情を交わしたり、好物のかりんとうを囓って過ごしていた。しかし、黒船来航で大騒ぎの世の中で一抹の不安に駆られる。そんな時に出会った戯作者・鈍亭魯文と意気投合。二人は、雄征の幼馴染みの切腹事件や、爆発した水車小屋をめぐる幽霊話の真相を探るのだが…。進むべき道を模索する青年の成長と彼を支える人々の優しさが胸を熱くする極上の時代エンターテインメント!期待の新鋭が放つ幕末青春物語。
著者等紹介
中島要[ナカジマカナメ]
早稲田大学教育学部卒業。2008年に「素見(ひやかし)」で第2回小説宝石新人賞を受賞。若き町医者の成長を描いた長編『刀圭』でデビュー。著書に新人賞受賞作を含む短編集『ひやかし』他がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤枝梅安
111
旗本の家の次男・日下雄征は、部屋住みの仲間と適当に時間をつぶし、「ささや」という小さな店のかりんとうを食べ、柳橋の芸者・鶴次と情交を交わすという、気楽な日々を送る。それでも侍の端くれ、黒船来航に江戸が動揺し、その余波が彼にも寄せてくる。兄が持ってきた婿入りの話を断り、根無し草のような生活を続ける。大地震をきっかけに、知り合いの戯作者・魯文と協力し地震の記録を作り始める。鶴次の厄介になりながらの生活の中から雄征が決心した己の生業とは。軽く読める青春時代小説。管理職を望まない現代の若者に通じるのかな。2015/04/16
ゆみねこ
64
中島要さん、初読み。旗本の次男坊の雄征は、かりんとう好きの真っ直ぐな男。自らの生き方に迷いながらも最後に選んだ道は納得。まずまず面白かったです。2015/07/28
初美マリン
57
軽く読もうと思っていたのに、特に剣ができるでもなくヒーローでないのに、普通に悩み心がフラフラしているのですが、ただ正直、素直に物事をみることができる主人公にだんだんおもしろくなっていきました。安政の大地震を絡めて大げさでなく道を見つけたことに思わず微笑みました。2018/07/29
優希
36
面白かったです。かりんとうをこよなく愛し、いつも口にしている様子を想像するだけで微笑ましいです。それでも時代の中で格闘しているんですよね。2023/11/17
スノーマン
33
幕末だというのに、のうのうと暮らすお侍さん。好物は、ささやのかりんとう。時代ものにしては何だか締まりのない主人公と話の流れやけど、幕末の侍だからと言って誰もが焦り、世を案じていたわけでもないやろから、そういうお侍さんもいたのかもしれんなあ。そんな中、シビアなのは駆け出しの戯作者魯文。大地震というアクシデントにあれやこれやと理屈を並べる主人公に対して、生きることは起こったことを受け入れて前に進むこと!とビシッときめるところがいい。頼りないふらふらの主人公より、よほど感情移入できる。2013/10/23
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