感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
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「すべての芸術は音楽の状態を憧れる」という美しい言葉はジョルジョーネ論のなかにあった。芸術の中で最も抽象的な素材を用いる音楽において、形式と内容は渾然一体となる。教会の支配下にあったローマや、新プラトン主義のメッカ・フィレンツェではなく、宗教や思想の圧力の少ないヴェネツィアという町が、ジョルジョーネの音楽的絵画を可能にしたとの指摘に蒙を啓かれる。代表作「嵐」のような、何十通りもの解釈を生んだ、主題のはっきりしない絵において、そもそも彼はいかなる主題も意図しなかったのかもしれない。色彩と構図の音楽的戯れ。2018/12/13