感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
瓜坊
7
才気溢れるスタンダールは敵をつくるのも天才的、というのがわかる本。人を嫌って、人から嫌われ、腐敗した社会を憎み、悪口多く、未練タラタラの愛を語る。容姿端麗でモテる『赤と黒』のジュリアン・ソレルはやっぱり彼の理想なんだろうか。記憶違い、曖昧なボカシ方、同一人物なのにコロコロ変わる人名表記、見栄で話を盛った所など、訳者注でつっこみまくられるのも面白い。あと、この本では「夫人」と付く人物は大体ビッチ。なんといってもエゴチスムなのは、数十年後の読者に書いたと言いながら、途中で投げて未完ということだろう。2016/11/11
うえ
6
未完の、そして矛盾多き楽しげな回想録。「本心をいえば、精神的な見地から、私は常にパリを軽蔑してきた。パリという町に気に入られるためには、式部長官セギュール氏のような人間でなければならなかったからである。形而下的な見地からしても、パリが私の気に入ったためしはついぞない。1803年時分でさえ、周りに山がないという一事のために、ひどくパリが厭だった。故郷(ドーフィネ地方)の山々は、この世に生れて十六年の間、私の心の情熱的な動きを見守ってくれた証人であり、私の心に消しがたいbiasを刻み込んだのだった。」2022/08/13




