内容説明
失恋、深い関係を望まない恋人、終わらないパートナー探し―。現代の不幸な恋愛関係・夫婦関係の原因は、幼少期の経験でも未熟な性格でもない。問題なのは、私たちの愛し方を形作る制度的な力である。
目次
第1章 はじめに―愛という名の不幸
第2章 愛の大転換/結婚市場の誕生
第3章 献身恐怖症と新たな恋愛的選択の設計
第4章 承認をめぐる要求―自己の脆弱性と愛
第5章 愛、理性、冷笑
第6章 恋愛的空想から失望へ
第7章 エピローグ
著者等紹介
イルーズ,エヴァ[イルーズ,エヴァ] [Illouz,Eva]
ヘブライ大学社会学部教授、フランス国立社会科学高等研究院教授。モロッコのフェズ生まれ、10代でフランスに移住。アメリカ合衆国ペンシルバニア大学で博士号を取得後、フランス、ドイツなどで要職を歴任。現代資本主義と感情とのかかわりから「感情資本論」を展開し、現代の感情社会学を牽引する存在である
久保田裕之[クボタヒロユキ]
日本大学文理学部社会学科教授。群馬県・桐生市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、劇作家・構成作家として活動。その後、国際基督教大学教養学部を経て、大阪大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。専門は、家族社科学、福祉社会学、政治哲学。シェアハウスなど非家族的共同生活実践の経験的研究を軸に、親密性、ケア、共同性についての理論的研究を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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花筏
3
近代における恋愛が人を傷つける側面について社会学者が書いた本 貧困が陥った個人に欠陥があるということではなく社会の構造から生まれざるを得ないものであるように、恋愛による傷つきも現在の社会の構造の中で生まれざるを得ないものであると説明してくれている 自分が今まで日常の中で感じていた「恋愛無理ゲー感」の背景の種明かしをされているよう また、恋愛観もコンテンツに接する中で形作られたものであるという視点はあんまり考えたことがなかったが面白いと思った 注意点は、視点が欧米の女性のみに限られていること2025/03/09
purjus
2
思い当たる節がありすぎて面白かった。男女のすれ違いを心理学的「あなた個人」ではなく、また進化論的「人間という種」からではなく、その中間の社会的・歴史的構造から読み解いていく。儀礼から真正性レジームへと社会が転換したことで、個がいかに不確定性にされされてるか。自由とコミットメントの間で特に女性がアイロニカルなふるまいを強いられている構図。歴史的に構成された頑強なジェンダー構造は時に女性にとってさえ転覆の両義性をはらむために魅力的、という点には非常に腑に落ちるものがあった。(勿論、昔に戻れという本ではない)2025/04/10