目次
第1章 日本における差別扇動行為規制をめぐる議論状況
第2章 西ドイツにおける民衆扇動罪の誕生
第3章 刑法第130条の拡張とホロコースト否定表現の処罰
第4章 刑法第130条の解釈論上の諸問題
第5章 刑法第130条の合憲性をめぐる議論
第6章 民衆扇動罪規定の刑罰論上の位置づけ
第7章 欧州人権裁判所判例にみる差別扇動行為の評価
著者等紹介
櫻庭総[サクラバオサム]
1980年青森県弘前市に生まれる。2003年関東学院大学法学部卒業。2010年九州大学大学院法学府博士後期課程修了。博士(法学)。現在、九州大学法学研究院助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mittsko
5
民衆扇動罪と人種差別表現をあつかった、ゴリゴリの法学(比較法学?)博士論文の書籍化。普段、このジャンルを全く読まず、本書読解に大変苦労したボクには、本書の法学上の価値や批判点を指摘することはできない。しかし、大変!勉強になり、大変!有意義な読書でありました。法学で「思想する」― そんな論述が見事に成立していることを知りました。そして、ある種の被害者が別種の加害者、という今日の止めようのない循環を凝視して問題を立ち上げようとする本書著者の知性は、大変豊かで価値のあるものだ、と思いました。読む価値ありです!2018/05/29
Sakana
4
なかなか大変な一冊だったが、本当に読んでよかった。差別問題やそれを取り巻く憲法や刑事法規制についての諸言説に対する認識がガラリと変わった。日本の法律や議論ばかり目にしていてはだめだ。捉え方も議論の幅も質も全然違う。それにドイツでは規制論がシャットアウトされてしまうことはない。差別表現は意見表明の自由には服さず、むしろ平等原則に反する侵害行為であり、さらにそれは「過去の克服」のために内部から湧き上ってきたものなんだ(≠連合軍)。刑法130条の法制史は本当にためになると思う。難しいけど、読んで絶対損はない。2015/12/26
たろーたん
2
ドイツの差別行為を罰する法律。しかし、差別行為を罰すると言っても、「なぜ罰に値するのか?」「何が罰せられる差別行為なのか?」と細かく考えると疑問が出てくる。なぜ罰せられるのか、ドイツの民衆扇動罪の保護法益は「公共の平穏」だった。つまり、これは「公共の秩序に対する罪」という位置づけなのだ。でも、「公共の秩序を持ち出すと、罰される行為の範囲が曖昧になりそう」と思ったが、そこはドイツでもしっかりとブレーキがあるらしい。(続)2023/11/25
お魚くわえたザサエさん
1
現在、日本でも問題になっている人種差別、ヘイトスピーチにどのように立ち向かうのかについて、ドイツの方法をお手本にすべきだという意見がある。そのドイツにおける対策と、それがなぜ行われているかについて知るために必読の本である。2014/12/23