出版社内容情報
結婚後は専業主婦になるのが普通だった昭和40年代半ば。後に徳洲会病院創設者となる徳田虎雄と結ばれた秀子は、7人の子を育てながら経営計画書を作り、銀行から資金調達し、土地を購入して病院を建てた。決して自ら表舞台に出ることなく夫を立てながらである。
その夫、虎雄が医師を目指したのは、9歳の時に弟を病気で亡くしたことに起因する。故郷の徳之島で貧しい農家の子として育った虎雄は、夜中に体調を崩した弟を医者に連れて行くも診療拒否され、翌朝、弟は息を引き取った。当時の医療機関には休日・夜間診療などなかったのである。
「お金があれば弟は助かったかもしれない」「貧富の差で医療が受けられるかどうか変わるなんておかしい」。虎雄は数々の苦難を乗り越え大阪府松原市に徳洲会病院を建設する。
その理念は「生命だけは平等だ」――。24時間・365日、高度な医療が受けられる日本最大の医療法人の誕生である。
既得権益を脅かされた開業医の団体である日本医師会は猛反発。各地で徳洲会の病院建設阻止に動く。これに対し、虎雄は国会議員となり徹底抗戦した。何度も苦境に陥った虎雄を励まし、自らも陰で病院設立・運営に携わり続けたのが秀子だ。
虎雄の理念は浸透し、今では休日診療・年中無休の総合病院が当たり前になった。徳洲会は全国各地に200の施設を抱える医療法人にまで成長し、東日本大震災などでは災害(被災地)医療なども展開。弱者を助けるという虎雄の思いを今も引き継ぐ。
現在の徳洲会グループの発展は秀子の力なくしてあり得なかったともいえる。本書は貧しい生活から日本一の病院を作り上げるまで、夫の夢の実現にそばで携わり続けた妻の生きざまを描いたノンフィクション。
内容説明
貧しさを乗り越え、日本一の病院づくりへ―。医療法人徳洲会創設者・徳田虎雄の壮大な夢の実現に尽力し続けた、妻の生き方・考え方。
目次
第1章 青春の徳之島(人に尽くす苦労人;時代に翻弄されて;戦禍の中で;戦後の恐怖;ぬくもりの学び;うなり神の島;徳之島へ;初恋をめぐって;恩師との出会い;徳田虎雄の原点;虎雄のライバルは母;牛小屋での誓い)
第2章 ベスト2を目指して(苦労もやりがいがある;新たな旅立ち;貧しさの中で;試練を乗り越える;やればできる;病院づくりに向かって;神様はいる)
第3章 真実一路(夫婦の修行;医療過疎地;反対運動;魂の入った病院;魂をかけた戦い;真心が人の心を変える;男の修行;喜びも悲しみも)
第4章 愛を語る人(虎雄の原点;教育を通して;繊細さと機転と機微;危機管理;当たり前のこと;紙一重の人生;ユー・レイズ・ミー・アップ;すべてを味わった人生)
著者等紹介
松下隆一[マツシタリュウイチ]
1964年生まれ。作家・脚本家。映画脚本『二人ノ世界』が第10回日本シナリオ大賞佳作入選。小説『もう森へは行かない』が第1回京都文学賞最優秀賞受賞(『羅城門に啼く』と改題され新潮社より刊行)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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