出版社内容情報
葉室麟が最期に「書かねばならない」と挑んだテーマとは。不平等条約の改正に尽力した明治政府の外相・陸奥宗光を描いた未完の大作。
内容説明
たとえ批判にさらされようとも、外交官・陸奥宗光は上を向いて歩き続けた。著者が最期に、そして初めて「近代」に挑んだ未完の大作。坂本龍馬の姉を描いた短篇「乙女がゆく」を特別収録!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、福岡県北九州市生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞してデビュー。2007年、『銀漢の賦』で松本清張賞、12年、『蜩ノ記』で直木賞、16年、『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
312
葉室さんの逝去に伴って未完となったが、読みごたえは十分だった。幕末明治の傑物・陸奥宗光が主人公で坂本龍馬との出会いと別れのシーンが、心に沁みる。陸奥の父と面会するため自宅を訪れた龍馬は、なんと玄関前で立小便。それを見ていた陸奥と龍馬のやり取りが、映像が目に浮かぶくらいにリアルかつ、笑わせてくれた。また、その後の二人を象徴するような余韻もたっぷり。ゆくゆくは司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に迫る龍馬物語を書いてくれる、と信じていただけに、葉室麟の死が惜しまれる。2024/12/10
starbro
190
故葉室 麟は、新作をコンスタントに読んでいた作家です。未完絶筆の本作こそ、遺作・最後の長編でしょうか?陸奥宗光の物語を読むのは、初めてです。陸奥宗光の妻、亮子は、鹿鳴館の華、美貌の女性でした。 https://rekijin.com/?p=30737 私は鹿鳴館に少なからず縁があります。著者の新作がもう読めないのは、寂しい限りです。 2019/06/22
ナイスネイチャ
131
図書館本。著書の最後の作品。陸奥宗光という不平等条約の改正に力を注いだ話。未完だと思うが、伊藤博文の女好きの悪評をあんな違った切り口で描いてたのは新鮮でした。陸奥の龍馬愛が溢れているのも感じ取れて楽しく拝読させてもらった。2019/07/11
ひらちゃん
61
葉室凛さん、もっともっと書きたかったでしょう。闘病しながらもこれだけはと書き続けたのは陸奥宗光の半生。歴史的記述も多く、力のこもった作品に圧倒されながら読みました。残念ながら未完ではあるけれど、悩みながらも暁天の星を見つけた陸奥の、歩く道が照らされた所まで読めて良かったと思います。「曙光を旅する」で日本の近代化を追いたいとの思いを明確にし、意欲に燃えていたでしょうに残念です。特別収録の「乙女がゆく」。龍馬の姉乙女の貴重な第一歩は大きい。こちらも良かったです。2019/07/21
baba
52
一昨年急逝した葉室さんの新刊が出ていたので読んでいる間は、亡くなられたことが実感できませんでしたが、絶筆した今作が出版され、いよいよこれが最後だと寂しい。時代物、歴史物の著者が近代の歴史を描いていきたい気持ちが伝わり、書きたい事がまだまだあったであろうと悔やまれる。不平等条約の撤廃を求める陸奥宗光と支える夫人の睦ましい様子が心に残る。さあこの先は、<未完>この本を出版して下さったことに感謝です。2019/07/29