出版社内容情報
25年前、カメラマンの祖父とモデルを務めた祖母が心中した。高校生の光介がそこに感じた違和感とは。切なくてさわやかなミステリー。
近藤 史恵[コンドウ フミエ]
著・文・その他
内容説明
どちらかがどちらかを殺した?―。夏休みのある日、海辺の小さな町の高校生・光介の家に、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、二十五年前の祖父母の死が、実は無理心中事件であったと聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルを務めていた祖母。二人の間に何が起こったのか。切ない真相に辿り着いたとき、少年はひとつ大人になる。
著者等紹介
近藤史恵[コンドウフミエ]
1969年、大阪生まれ。1993年に『凍える島』で第四回鮎川哲也賞を受賞し、作家としてデビュー。以後、歌舞伎に題材をとった作品から臨場感にあふれたスポーツミステリーまで幅広い作品を発表している。2008年には『サクリファイス』で第十回大藪春彦賞を受賞、また本屋大賞2位にも選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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相田うえお
78
★★★☆☆20037【昨日の海と彼女の記憶 (近藤 史恵さん)】話の途中までを掻い摘むと、妹夫婦が暮らす実家に8歳の女の子を連れたシングルマザーの姉が帰ってきた。姉妹の祖父母は25年前に海で心中をしたらしく、田舎の町では未だにその噂が消えない。祖父の妹夫婦の子供である高校生男子は写真家だった祖父の作品を見て写真に興味を持つ。姉は長期間閉店していた祖父の写真店で仕事を始める。祖父母が心中した謎が少しずつ解き明かされ...。(脱線話)壁に描かれたスプレーの落書きを見て感動するときがある。でもそれは良くない事!2020/04/02
りゅう☆
72
高校生光介の家に叔母芹と従妹双葉が来て一緒に暮らすことに。カメラマンの祖父と彼のモデルだった祖母。25年前にどちらかがどちらかを殺して一緒に海で死んだという。カメラに興味を持ち始めた光介。祖父の弟子に会うも彼女は祖母を憎んでいた。ドロドロの展開か?祖父母の死の真相を探るべく1人でこっそり日帰り東京へ。初めての東京、番狂わせな飛行時の遅れ、バレた嘘。だけどその体験が光介を大きくした。そして祖母でない裸のモデルの正体に二転三転の驚き。祖父母の死の真相は光介にとっては複雑な思いだけど、温かな感じの読後感でした。2023/07/22
けろりん
58
四国の海辺の町で両親と暮らす高校生の光介。地元の進学校に通い、穏やかだけれど変化に乏しい夏休みのある日、母の姉とその娘が同居する事になり、半分死んだようだった家が過去の記憶とともに動き出す。写真家として一定の評価は得ていたものの、それだけでは生活出来ず写真屋を営んでいた祖父とそのモデルを勤めていた祖母が25年前に同時に死亡した事故の真相、芸術の光と闇、究極の一枚を追い求める者の狂気に似たエゴ。痛ましい過去を知る事で、傷つきながらも、少年は家族の歴史と自分の繋がりを理解し、秘密を抱える事で大人になって行く。2022/11/11
優希
58
胸がギュッとなりました。25年前の無理心中。祖父と祖母どちらの意志だったのかもしれませんが、切ない真実を抱えられたとき、少年は大人への一歩を歩んだと言えるでしょう。2020/07/13
カブ
54
祖父母は2人で目の前の海に入って心中したと聞かされて育った、高校生の光介の夏休みの出来事を綴る。嘘をつくことと、秘密を抱えることは似ているようで全く違う。光介は家族の秘密を探っていくうちに、その事に気付く。ミステリーでもあり、成長物語でもあるけど、帯にあるような、さわやかな青春ミステリーとは少し違う気がした。2019/05/26