出版社内容情報
江戸は下町、本所のおけら長屋。出会いがあれば別れもある。笑いと共に人生の機微を描いた連作短篇集。人気時代小説シリーズ第5弾。
内容説明
今日も騒ぎが絶えない本所おけら長屋―。だるま長屋との度胸勝負で本物の幽霊が…。お染が考えた半襟が売り出されて大当たり?吉原に通い詰める藩士の子細を知った藩主・高宗の決断とは。久蔵が見た富くじの夢は現実となるのか。金貸しのお熊ばあさんが過去と訣別するために選んだ手段は…。笑いと涙が同居する、大反響の連作時代小説シリーズ第五弾。文庫書き下ろし。
著者等紹介
畠山健二[ハタケヤマケンジ]
1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。2012年『スプラッシュマンション』(PHP研究所)で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんたろー
202
第5巻もシリーズらしい噺が5つ。その中でも、幽霊絡みの人情喜劇『ねのこく』は幽霊が生活の一部になっている様にほのぼのしつつ、金太の「乙な女」好きが絶好調で大笑いしたのと、『はるこい』の理不尽な世の中で健気に生きる女郎と好感持てる殿様のシーンが印象に残った。何と言っても本巻は『わけあり』が秀逸!お熊&お奈津の哀しい過去と複雑な人間関係を交錯させて、見事な人情噺に仕上がっていた。切なくも温かい余韻に包まれて目頭が熱くなって、もっと著者の長編を読みたくなった。キャラ達の役割も板についてきて目に浮かぶのも嬉しい♬2020/02/07
のり
125
畳職人の喜四郎の妻「お奈津」の抱えた事情から大騒動に…前回登場のお熊ばあちゃんの邂逅と共に切なさが募る。まさかの結末に言葉も出ない。「はるこい」の話も重くのしかかった。黒石藩の現状、政は誰の為にあるのかを真摯に受け止めようとする藩主は名君の器である。2018/10/20
nico🐬波待ち中
104
シリーズ第5弾。さすがはお節介と人情で知られたおけら長屋。とうとう幽霊にまでお節介をやくなんて。幽霊の話しに耳を傾け、なんとか成仏させたいと策を練る。そろそろ成仏しな、と励ましながら幽霊に酒を次ぐ。やっぱりいいな、おけら長屋。そして一番泣けたのは『わけあり』。金貸しのお熊ばあさんが幼い頃から心の中にずっと抱えていた重い荷物。最後に取り出すことができて本当に良かった。人と人とが繋がっていって、互いを思い合って生きていくことの大切さをお熊ばあさんから教わった。やっぱりお熊ばあさんが大好きだ…もう最後は号泣。2020/07/04
アッシュ姉
100
笑いあり涙ありの傑作第五弾。安定の万松名コンビ、素直すぎるおバカの金太、思わずもらい泣きした殿の涙、あっぱれな生き様のお熊ばあさん。シリーズを重ねるごとに味わい深く、読み応え倍増で面白い。おけら長屋の住人をはじめ、登場人物に対する著者の愛情が伝わってきます。ゲストの再登場やその後も描かれているので、追いかけるのが本当に楽しみ。一番好きなのは高宗様。驕ったところがなく、下の者の意見を聞く耳を持っており、優しくて涙もろくて、呑んだら楽しいなんて最高の殿様です。今後もたくさん登場してくれると嬉しい。2020/08/06
mayu
81
今回はしんみり泣けるお話が印象に残った。「はるこい」家臣の言葉に耳を傾け、すぐに行動を起こせるお殿様は立派だ。今目の前にいる1人を救うより、政自体を見直すことがみんなを救うこと。それは確かにそうだけど、お葉も救われてほしい。「わけあり」お奈津やお熊ばあさんが若い頃に背負ってしまった重い過去。どうしようもなかったことだからこそ苦しい。誰かの辛さをみんなで支えようとするおけら長屋に出会い、抱えていたものを打ち明けられたことで荷物は少し軽くなったはず。お熊ばあさんの償うために選んだ行動には泣けた。2021/03/25