出版社内容情報
殺人、自殺、売買春、国民主権……。人間の根源に迫る難問と向き合った、倫理学の新しい試み。大ベストセラーを大幅加筆して文庫化。
【著者紹介】
批評家、国士舘大学客員教授
内容説明
殺人や自殺はなぜいけないのか、売買春は許されるのか、死刑は是か非か、憲法はそもそも必要なのか―。今の社会を生きる上で、答えがあるのかさえわからない、数々の難問。本書はそんな「永遠の課題」ともいえる十個の倫理的主題に対し、批評家が真正面から向き合った渾身の論考である。さあ、あなたは、どう答える?現代日本の政治問題も見据えつつ、ベストセラーを大幅増補した決定版。
目次
第1問 人は何のために生きるのか
第2問 自殺は許されない行為か
第3問 「私」とは何か、「自分」とは何か
第4問 人を愛するとはどういうことか
第5問 不倫は許されない行為か
第6問 売春(買春)は悪か
第7問 他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか
第8問 なぜ人を殺してはいけないのか
第9問 死刑は廃止すべきか
第10問 国民は主権を持つのか
著者等紹介
小浜逸郎[コハマイツオ]
1947年、横浜市生まれ。横浜国立大学工学部卒業。批評家、国士舘大学客員教授。家族論、教育論、思想、哲学など幅広く批評活動を展開。また2001年より連続講座「人間学アカデミー」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GAKU
61
表題の他「人は何のために生きるのか」、「人を愛するとはどういうことか」、「売春(買春)は悪か」、「死刑は廃止すべきか」等正しい答えがあるのかさえわからない10個の難問に対して、作者が真正面から向き合った論考。色々と勉強になり、また考えさせてもくれました。特に作者の、“法体系の中に「死刑」を存置しておくことに賛成する”という論考は、私自身大変共感出来ました。ちょっと難しかったけれど興味深い1冊でした。2017/09/16
テツ
30
大人を戸惑わせる目的で出された「なぜ人を殺してはならないのか」という問いに対する答えは「ルールで決まっているから」しかない。何故そうしたルールに則り世界が構築されているのかということを説明してやればいい。ただもしもその問いが切羽詰まった個人的な悩みから生み出されたものだったとしたのなら夜を徹してその問いを生み出した根源について話し合うべきだ。自分の生命倫理について語るべきだ。そして明け方に議論を尽くした末に疲労を浮かべた顔で「でも殺すな」と言うしかないんじゃないのかな。色々なテーマ全て面白く読めました。2017/04/18
Y田
9
何故殺人はダメか、自殺はダメか、不倫はダメか、生きる目的は、、絶対的な答えを示す事は出来ない問題は多い。筆者の主張は、何故その問いが自分に生まれたか、その理由を考える事、そしてもう一度「問い直し」をする事だ。生きる意味が分からなくなってしまった時、何故分からなくなってしまったのか、個人的、又時代背景など考えて、もう一度問い直すと確かに問題自体が変わっている。解けない問題があるその時、問題が間違っているかもしれない。思考の仕方の一つとしてとても参考になった。2019/09/22
lily
7
目から鱗だったのは「なぜ人を殺してはいけないのか」というのは良い問い方ではなく、「人はなぜ人を殺してはならないと決めるようになったのか」と問うことで、歴史をも織り込む深い問いになるということ。また、「私とは何か」という問いには「私は何にイキイキするのかを探したい」という動機が含まれている、ということ。つまり、問い方やその背景に思いを至らせる姿勢が欠かせないのだ。重厚で難解な表現も多かったが、倫理の授業指導の時に再読したい。後半の憲法のくだりからはPHP研究所ならではの保守タカ派の香り漂う論考で完全に蛇足。2017/12/23
マイ
5
「人を殺してはならない」という倫理は、それ自体として絶対の価値を持つと考えるのではなく、共同社会の成員が相互に共存を図るために必要なのである。