出版社内容情報
イラク戦争の時代から今一度東京裁判を問う。
東京裁判について、そして「戦犯」について、我々は何を考えるべきか。戦犯として殺された人々の遺書から「文明の裁き」の意味を問い直す、感動の論考集。
米軍によるイラク・アブグレイブ刑務所での数々の捕虜虐待が明らかになった。ここで日本人として思い起こさずにいられないのが、第二次大戦後のBC級裁判である。文明の裁きの名の下に、捕虜虐待などの容疑で五千人以上が訴追され、千人近くが刑死せざるをえなかったあの裁判である。
▼本書の第一部では、刑死された人々の遺書を集め、昭和28年に発刊された『世紀の遺書』と、シンガポールで刑死した学徒兵木村久夫氏の遺書を紹介した『或る遺書について』を紐解き、彼らが不条理に抗した声の数々を検証していく。また第二部では、東京裁判を様々な角度から論じ、東京裁判が戦後の日本の精神史に与えたものを検証していく。
▼我々はいまあの裁判をどう受け止め、何を考えるべきなのか。著者の精緻なテキスト読解が新たな光をなげかけ、読者を深い理解に誘う。まさに、戦後日本を考えるうえで、避けて通れぬ必読の一冊である。
[第1部]BC級戦犯裁判と戦後思想
●第1章 不条理に抗する言葉―「世紀の遺書」という文学
●第2章 時空をこえて死者の声を聴く―戦後史の中の木村久夫
[第2部]東京裁判から日本文化論へ
●第3章 英米法で闘った人―高柳賢三弁護人
●第4章 論理と常識とを武器として―山本七平の東京裁判
●第5章 「A級戦犯」の濫用を憂う―戦後精神史の一側面
●第6章 「戦後」を決めたもの―東京裁判、「菊と刀」、そして「甘えの構造」
内容説明
本書は、「文明の裁き」、「勝者の裁き」という側面を考慮しつつも、第一義的には戦後という空気を作り出した主因としての対日戦犯裁判の「意義」を検討する。第一部は、BC級戦犯法廷を再考の俎上に載せる。第二部は、いずれも東京裁判を対象とする論考から成り立つ。
目次
第1部 BC級戦犯裁判と戦後思想(不条理に抗する言葉―『世紀の遺書』という文学;時空をこえて死者の声を聴く―戦後史の中の木村久夫)
第2部 東京裁判から日本文化論へ(英米法で闘った人―高柳賢三弁護人;論理と常識とを武器として―山本七平の東京裁判;「A級戦犯」の濫用を憂う―戦後精神史の一側面;「戦後」を決めたもの―東京裁判、『菊と刀』、そして『「甘え」の構造』)
著者等紹介
牛村圭[ウシムラケイ]
昭和34年金沢市生まれ。東京大学文学部(仏語仏文科)卒業。同大学院(比較文学比較文化)、シカゴ大学大学院(歴史学)、各博士課程修了。学術博士。カナダ、アルバータ大学客員助教授(日本語日本文学)等を経て、現在、明星大学青梅校助教授。近現代日本思想史(比較文化論、文明論)を専攻。著書に『「文明の裁き」をこえて―対日戦犯裁判読解の試み』(中公叢書、2001年、第10回山本七平賞受賞)などがある
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。