出版社内容情報
「正しい・正しくない」ということがわからなくなった時代に、倫理学は、どのような役割を果たすのだろうか。鷲田教授流の視点で迫る。
内容説明
「人間」は、なぜ倫理学という学問を必要とするのだろう?「生きる力」について深く考える鷲田流講義録。
目次
1 人間の生命力、あるいは、人間はなぜ倫理を必要とするのか(動物の生命力、あるいは、なぜ動物は倫理を必要としないのか;人間個体の生命力 ほか)
2 資本主義の生命力、あるいは、資本主義はなぜ倫理を必要とするのか(資本主義は、人間の生命力にとって、最適システムである;資本主義と民主主義の結婚 ほか)
3 日本資本主義の生命力、あるいは、日本資本主義の倫理(日本資本主義は、西欧資本主義と、並行的発展をした;日本民主主義の特徴 ほか)
4 社会主義の崩壊と社会主義の可能性、あるいは、その倫理(社会主義が目指したものと実現したもの―社会主義の理念と現実;社会主義の倫理 ほか)
著者等紹介
鷲田小弥太[ワシダコヤタ]
1942年札幌市生まれ。大阪大学文学部哲学科卒業。同大学院博士課程修了。三重短期大学教授を経て、現在、札幌大学教授。専攻は、哲学、倫理学
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感想・レビュー
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やまやま
3
個体においては、人間の欲望をどうコントロールするかが倫理の課題としている。「過剰」な生命力という表現も用いて、ホッブズ的な世界が生まれるのを制御する方式を探る。個体観から社会に移ると、これもベンサム的な「最大多数の最大幸福」であり、著者は日本社会はその最大多数層がかなり厚いことが評価に値すると整理している。資本主義に社会主義を「接ぎ木」することで、社会主義は生命力を発揮できるという表現では、人間の過剰な生命力を拡大するという資本主義での定向進化を幾分コントロールできる知恵と理解した。2019/05/21