出版社内容情報
政治、女、階級、恋愛、玄人、保守などのテーマに沿って、大人にしか味わえない毒を帯びた文芸作品を提示する、福田流・悪の名作案内。
大人になること、成熟とは何だろう。「自分がまったく頼りにならない、身勝手で先の見えないでくの棒にすぎないことを知って、はじめて本当に歩きはじめることができる」。これがつまるところ「成熟」への入り口に他なるまい、と著者はまえがきに書いている。
▼『パルムの僧院』に描かれる絢爛たる政治の享楽、共感に溢れる心を持った安吾の、同情への禁欲、『黒髪』における男の情痴愚考への勇猛さ、『カラマーゾフの兄弟』のイワンが糾弾するユートピア的「愛の世界」の欺瞞……。
▼本書は、読書、政治、女、階級、恋愛、保守、家族、自殺など17のテーマに沿って、34冊の名作をひきつつ、読者自身の「成熟」を問う。人間性とその社会の不変の悪を引きうけ、なおかつ野太く、強く、華やかな幸福を求める大人のための、また、そのような大人になるための読書ガイド。
[1]読書
[2]政治
[3]女
[4]賭博
[5]玄人
[6]同情
[7]米国
[8]階級
[9]性
[10]恋愛
[11]自己犠牲
[12]保守
[13]男
[14]郷愁
[15]家族
[16]子供
[17]自殺
内容説明
すべての日本人に読んでほしい。エレガントな悪意の読書ガイド。
目次
読書とは呪いである。もしも日常から溢れでるものを持っていないのならば、あなたは書物を友にできないだろう―読書
あなたは新聞を読まないことができるし、投票も行かないこともできる。だが、政治はあなたを手放しはしない―政治
女が経験するような空虚な孤独を、男はけっして知ることができない―女
生を一瞬で転じる魔法=賭博、その恍惚感から人が逃れられぬ理由―賭博
玄人とは、生業が強いるルールや感性を全面的に引き受け、取り返しのつかない一線を越えた存在として生きること―玄人
同情に発する善行もたくさんある。だがそれが正しいのは、同情以外の思惟が働いたか、あるいは偶然正しかっただけだ―同情
アメリカは人間の土地なのか。ここに住んでいるのは、生きた人間ではなく亡霊ではないのか―米国
「階級」を語る際に、文化、価値観が論じられないところに、よくも悪くも戦後日本の特質がある―階級
二十世紀、性は宗教になり、もっとも強迫観念を帯びたイデオロギーになった―性
なぜ、恋愛が成り立ちがたくなったのか。現代の日本人ははたして、他者と親しく結びつくことができるのか―恋愛〔ほか〕
著者等紹介
福田和也[フクダカズヤ]
1960年、東京生まれ。慶応義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。現在、慶応義塾大学助教授、文芸評論家。『日本の家郷』(新潮社)で三島由紀夫賞、『甘美な人生』(新潮社)で平林たい子文学賞、『地ひらく』(文芸春秋)で山本七平賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。