出版社内容情報
失われた名水の歴史に学ぶ環境政策のあり方。
「安全な水の確保」という大義名分により日本人は何を失ったか? 近代水道建設をめぐる技術と政策の確執を環境との関わりから読み直す。
古来より、山紫水明の地と謳われてきた京都。しかし、明治に入り近代水道が建設されたことで、手入れのされなくなった井戸は涸れ、生活からかつての豊潤な名水は失われた。そして人々は現在、日本でも有数の「まずい」「臭い」水道水を飲んでいる。
▼当時、「安全な水の確保」という大義名分のもと、東京に奪われた都の威信を取り戻したい市当局、水力発電による電力を確保したい事業家等、様々な勢力の思惑がはたらいた。その結論としての「上水道優先」「琵琶湖を唯一の水源とする」という選択は、安全な水環境の実現という点で、本当に妥当なものだったのだろうか?
▼人間が築き上げた技術や産業、それにまつわる選択や政治的判断の歴史を、「環境」と関わりから再評価すること――それが、著者が提起する「環境史」の試みである。無数の論点が錯綜する環境問題、リサイクル問題を整理して考え、現実を評価するための有用な視点を提供する一冊である。
●第1章 環境史の可能性
●第2章 水道以前の水環境
●第3章 博覧会・祇園祭とコレラ
●第4章 京都水道建設と陰影
●第5章 大阪の水環境史
●第6章 多元構造再考
内容説明
山紫水明の地と謳われてきた京都。しかし人々の生活から、かつての豊潤な名水は失われた。「安全な水の確保」という大義名分で琵琶湖の水を唯一の水源とした選択は正しかったのか?それにより本当に安全な水環境は実現したのか?人間が築き上げた技術や産業、それにまつわる選択や政治的判断の歴史を、「環境」との関わりから再評価すること―それが、著者が提起する「環境史」の試みの一つである。本書ではその視点から京都の近代水道建設をめぐる人々の思惑と営みを読み解いていく。
目次
第1章 環境史の可能性
第2章 水道以前の水環境
第3章 博覧会・祇園祭とコレラ
第4章 京都水道建設の陰影
第5章 大阪の水環境史
第6章 多元構造再考
著者等紹介
小野芳朗[オノヨシロウ]
1957年、福岡県生まれ。京都大学工学部卒業、同大学大学院修士課程修了。京都大学工学部助手、同講師を経て、現在、岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科助教授。専門は水浄化技術、環境リスク工学、消毒。工学博士
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