出版社内容情報
少女時代をイギリスに過ごし、戦後の混乱の中で四人の子供を育て上げた母の一生を、グレにグレた末っ子の目を通して描く感動のドラマ。 「この小説は、四人兄弟の最後に僕を生んでしまった母と、早々とグレにグレた末の息子の物語です」と、「あとがき」にあるように、本書は著者の母・玉枝さんの少女時代から、昭和63年に81歳の生涯を終えるまでを、息子の目を通して描いた小説である。 明治40年生まれの玉枝さんは、大正初期に少女時代をロンドンに過ごし、昭和3年、日本郵船に勤務する安部正夫と見合い結婚。戦後の混乱期に四人の子どもを育てたが、末っ子が中学時代に無頼の道に入り、以後30年間、苦労をすることになる。心の平安を取り戻したのは、晩年の10年間だった。苦労をかけた母への思い、それが著者をしてこの小説を書かせたといってよい。 ゴロツキ時代をユーモラスに描いた作品は数多いが、この作品ではその味をセーブし、母への鎮魂と懺悔、明治、大正、昭和の三代を生き抜いた「安部版 女の一生」に仕上げている。小説家・安部譲二の新境地を開く一冊である。
内容説明
母が亡くなって十年が経ちました。その間に嫌な想い出はほとんど風化して、母・玉枝は、今や慈母観音のようになってしまったのです。この小説は、四人兄弟の最後に僕を産んでしまった母と、早やばやとグレにグレた末の息子の物語です。