出版社内容情報
日本文学史上の傑出した二大「恋物語」。本書では、丹念に作品を読み解きながら、古典に内在する恋愛の普遍性を現代によみがえらせる。
内容説明
人間が思いつく男と女の恋のヴァリエーションをほとんど探究しつくした伊勢物語。そして伊勢物語の愛の主題の「変奏曲」として、女たちの人生の「光と闇」を描いた源氏物語。本書は両作品を、二つで一セットの「巴の文様」をなす双璧として対比させながら、王朝文学の恋愛観を読み解いていく。「人はなぜ物語を求めるのか」という不変の問いに挑む、新しい文学論。
目次
序章 男と女の愛の物語
第1章 伝説のヒーロー・在原業平
第2章 伊勢物語にみる「愛」のかたち
第3章 源氏物語登場
終章 物語のゆくえ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
xin
2
著者の思い入れが強すぎるだろ思わないでもないがが全体としては面白い。2017/02/02
がんちゃん
2
長編と短編の違いもあるが、恋愛を女側から描くか男側から描くか。そこの違いが面白かった。さらに伊勢物語はさまざまな男女の愛の形を語るだけだが、源氏物語はその愛の形に作者の憎悪と怨念の意が加わって描かれているんだとか。確かに、源氏物語の中に「真実幸福だった女」は一人も登場していない。物語が必要だったのはじつは作者の紫式部の方であったという解釈。なるほどなぁ。2015/12/14
catfist
1
「恋のカタログ」「恋のテキスト」としての伊勢物語を称揚する段には力が入っており読ませるのだが、源氏物語の段に入るや、当然のように紫式部を「悪意の人」と断定し、それを根拠に論を展開し始めるので困惑する。源氏物語が伊勢物語を踏襲しつつ女側の心理を補完しているの論、「伊勢物語の純粋の愛のテーマを、源氏物語が意図的に憎悪と悪意のテーマに変奏してしまっている」(序章)との表現には興味をそそられただけにがっくり。「作者がどういう人物であったら面白いか」という視点が入っていることを留意する必要がある。いや面白いが。2021/12/05
Terry Knoll
1
源氏物語には伊勢物語を手本や下地にした部分が多い。両方読みたくなる本です。2017/05/20
Noelle
1
源氏物語は最大の伊勢物語の主題による変奏曲!!という考察を、在原業平と光源氏、それぞれの物語に登場する女君たちの比較でもって考証していく。源氏の成り立ちとして、ここまで伊勢物語にフィーチャーしたものは初めて読んだような気がする。結句、鎌倉時代「伊勢源氏十二番女合」の平成版でしょうかね? 王朝文学の恋愛関係はこの両作品で語り尽くされていると言い切られると、そうなの?と思わないでもないが、王朝物語論としてはなかなか面白うございました。2016/11/17