感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
17
黒澤明監督の「羅生門」でカメラを務めた宮川一夫の回想録。映画全盛期の<活動屋>の奮闘、真剣勝負、ロケでの破天荒ぶりなどが伝わって来る。カメラマンではない、キャメラマンだ。監督とキャメラマンは夫婦。映画は大切な子供。子供をめぐって大喧嘩をした仲ほど名作を産む。雨を待って何日も待つ。隅々まで小道具の色にこだわる。私が映画を見始めたのは既にテレビの時代だったが、まだ多くの巨匠が頑固で大迫力の映画を撮っていた。巨匠のいない今は流れ作業のような映画ばかりだ。もう一度ワクワクする映画に出会いたいと切に思う。2017/06/21
こうすけ
12
稲垣浩、黒澤、小津、溝口、市川崑、篠田正浩など、そうそうたる監督たちと組んできたキャメラマン・宮川一夫の自伝。読みやすく面白い。戦前の、何をすればいいかわからないけどとにかく楽しい映画を作りたい、という日本映画界の空気感が伝わってくる。醤油フィルターなど、アナログな工夫が良い。2020/11/15
げん
2
東京オリンピックの記録映画を撮影したキャメラマンの自伝。数々の映画監督とのエピソードが淡々と綴られているが、特に興味深かったのはオリンピックのマラソンの撮影の話。アベベの疲労による表情の変化、飛び散る汗まで鮮明に記録するための工夫。デジタル時代になって失われてしまったものが、この時代には確かに存在していた。2013/11/25
meme
1
溝口健二を卒論で扱うため 読んだがこの人の言葉は偉そうでなくて刺々しくなくて難しい言葉で語ろうとしていなくて 物事の本質を捉えようとして、今の時代はそれができない でもそれは若い人のせいではなくて 環境や仕組み、時代のせい と毎回言う。 また無駄だと思ったことや遠回りだったことはきちんと価値があったとなんども語る。 こういった物事に対する姿勢に共感した。2020/11/20