内容説明
イコノロジー研究とは、ひとことでいえば美術作品の意味の探求だといえよう。つまり美術作品を、ある時代の人間精神の一般的本質的な傾向がそこに表われているある種の徴候として、とらえようとする研究態度である。こうした新しい視点をもって美術史を一つの解釈の学として基礎づけようとしたのが本書である。
目次
ピエロ・ディ・コジモの二つの絵画群における人間の初期の歴史
時の翁
盲目のクピド
フィレンツェと北イタリアにおける新プラトン主義運動(バンディネリとティツィアーノ)
新プラトン主義運動とミケランジェロ
追録 カサ・ブオナッロティの粘土原型
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
千瑞
2
モチーフが持つそれぞれの意味が、どのように古典から引用され、またキリスト教的な価値観、あるいは新プラトン主義的な価値観のなかで、組み立てられ、表現されてきたのか。私が想像していたよりずっと複雑で、入り交じったものだったと分かりました。私は専門家ではなく、ただ旅行のための勉強に読んだのですが、面白かったです!!2012/05/12
ジェニー
0
「愛の理念は、実際、フィチーノの哲学体系の中核そのものである。愛は、神が神の本質を地上に向けて放射する際の――あるいはむしろ神が神そのものとなるための――原動力であり、また反対に、愛は、神の造った人間たちが再び神と一体となろうとする際の原動力でもある。フィチーノによれば、「愛」こそは神から地上へ、そして地上から神へというあの自己回帰の流れ(精神的循環)の別名にほかならない。愛の状態にある人間はこの神秘的な回流のただ中に身を置いているのである。」(p122)2025/10/13