内容説明
比類なきスプリンターとして知られるグレイハウンド。この物語の主人公犬は人間の都合で、三回も飼い主をかえられる。つけられた呼び名も三つ。しかし、そのたびに運命を受け入れ、出合った人々の心の支えとなり、幸せへと導いていくのだった…
著者等紹介
モーパーゴ,マイケル[モーパーゴ,マイケル] [Morpurgo,Michael]
1943年、イギリスのハートフォード州生まれ。ロンドン大学キングス・カレッジ卒業。小学校教師を経て作家となり、とりわけ児童文学作品を数多く発表。この分野で、現代イギリスを代表する作家としての地位を確立している。2003~2005年桂冠児童文学作家
佐藤見果夢[サトウミカム]
1951年、神奈川県生まれ。明治大学文学部卒業。公立図書館に勤務ののち、絵本や児童文学の翻訳にたずさわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糸車
30
3月の子どもの本の読書会課題本。生まれて間もなく袋に入れられ運河に投げ込まれた仔犬たち。冷たい水に飛び込んで彼らを救ってくれた少年、レース犬を世話する少女、心優しいおじいさんと次々飼い主が変わってそれぞれ違う名前で呼ばれながら懸命に生きる“犬”。少し切なくしんみりとしますが人間に寄り添う犬の存在がとても愛おしく思えます。2019/03/12
みゆき
18
犬のどんな姿が一番好きかと問われたら、全力疾走してる姿と答える。脚が短い犬種も可愛いけれど、飼いたいとは思わないのは走るのが遅いからだろう。疾走する犬は美しい。本作は「世界で最も足の速いカウチポテト」と言われるグレイハウンドが登場。3回も飼い主が変わり都度名前が変わるのに、運命を受け入れて人間の心の支えになって生きる。犬には適応力と包容力がある。幾つかの社会問題を織り込みながら、犬と人間との絆を描く。ラストはちょっぴりほろ苦いけれど幸せだ。犬には敵わないな。愚かな人間に与えられた最高の動物だ。2021/10/14
ヒラP@ehon.gohon
14
一匹の犬の運命に、モーパーゴは様々な社会問題を組み込んでいきます。 文章に勢いがあるので、一気に読み終えてしまいました。 やっと最初の飼い主パトリックに再会したときのシーンが哀しいです。 「ベストメイト」として認知してもらえず、「パディワック」として生きていくのです。 動物の側から見たら飼い主はどのように見えるのだろう? 道をさ迷っている捨て犬はどの様な生き方をしてきたのだろう? 読後の余韻がしみじみとしてしまいました。 挿絵を描いているマイケル・フォアマンに再会したのも嬉しかったです。2015/12/04
ぱせり
14
人の都合で運命に翻弄される犬が、その都度、信頼できる飼い主に巡り合えたのは幸運というよりも、彼の気だての良さのせいだろう。動物が人に与えてくれる力は、なんと計り知れないものだろう。その一方で、人間の都合で動物を利用したり処分したり、身勝手さ、残酷さがたまらない。また、権力に蹂躙される小さな人びとが明るい温かいものを湛えて立ちあがる姿にも打たれた。 2015/10/30
おーうち
10
捨て犬がいろんな持ち主のもとを渡って苦労と幸せを感じる話し。最初の子どもとは再会できた。みんなと再会できるのかなと思ったけど、1人でも再会できて良かったとしかいえない。捨て犬の幸福だからたいしたことないけど、そのちっぽけな幸せに感動させられる。動物愛護、老人ホームの話で、戦争は今回ほんのちょっとだけでてきた。身の回りに虐げられている母子家庭やペットや老人がいる、みまわせばどこにでも社会を良くする材料はあるというメッセージなのだろう。メッセージはともかく、小さな幸せに感動させられる。2020/03/21