内容説明
放射能汚染をまぬかれた谷間で、たったひとり生き残ったアン。そこにやってきた見知らぬ男の正体は?―少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く傑作ミステリー。待望の改訳新版!1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞作。
著者等紹介
オブライエン,ロバート・C.[オブライエン,ロバートC.][O’Brien,Robert C.]
1918年、ニューヨーク州ブルックリン生まれの作家。本名ロバート・レズリー・コンリー。1973年に55歳の若さで亡くなる。邦訳作品に『死の影の谷間』(1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞・評論社)のほか、『フリスビーおばさんとニムの家ねずみ』(ニューベリー賞受賞・冨山房)がある
越智道雄[オチミチオ]
翻訳家。明治大学名誉教授。1936年愛媛県今治市生まれ。広島大学文学部英文科でジョイスを研究、同大学大学院文学研究科博士課程でディケンズ、サッカリー、フォークナーを研究。1983年『かわいそうな私の国』(サイマル出版)で日本翻訳家協会出版文化賞、1987年『遠い日の歌が聞こえる』(冨山房)で産経児童文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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☆よいこ
61
YA。核戦争後の世界、核汚染を免れた谷間にただ一人取り残された15歳の少女アン。家族は外の様子を見に行くと出かけて行き1年以上音沙汰がない。アンは、鶏と牛を世話し、野菜を育て細々と暮らしていた。ある5月の終わり一人の男が谷にやってきた。放射能防護服を身にまとい、青白い顔をした科学者ルーミスだった。死にかけたルーミスを献身的に介護し、力を合わせて未来を生きることを、アンは夢見る。しかし元気になったルーミスはアンを支配しようと襲ってきた。アンは森の中に逃げる。▽1985年評論社『死のかげの谷間』の改訂新版。2020/01/23
星落秋風五丈原
36
核戦争後のディストピア社会。たった一人生き残ったと思っていた少女アンの前にある日30代くらいの男性ルーミスが現れる。ところがルーミスがこの後豹変。ああやっぱり男の方が生存本能強いんだろうなあ。生への渇望=性衝動といった感じ?病気になったのも理由の一つだろうけど。何にもわからないのに殺されちゃうファロがかわいそうだよ。2022/06/27
あたびー
25
#日本怪奇幻想読者クラブ 最終戦争が起き一人生き残ったアンの住む谷に姿を現した男ルーミス。汚染された川で不注意に水浴して体調を崩した彼をアンは必死に介護する。やがて回復した彼は…。一体この悲劇は何を示唆しているのだろう?男性による女性の支配か?科学と経済による農業の奴隷化か?人間同士のコミュニケーションの行き違いか?映画だと大体アンは彼を殺さざるを得ないと判断するのだろう(アメリカ人だし)。そうならない所にこの物語の深さを感じる。エデンからの自己判断による放逐。残された者にとってそこは楽園か?2020/01/12
みー
17
1970年代に作られた物語だなんて!今現在の方が、この物語の世界は現実味を帯びているように思う。戦争が始まり、核が使われ、1週間で人類は滅亡し戦争は終結。谷間で暮らす少女、ただ一人生き残った所に、男がやって来る。少女は、共に生きるべく歩み寄りを考えるが、男は主導権を握り、少女を窮地に追い込んでいく。少女にとって過酷な生活が始まる。男と女。力関係。それらが絡みあい、児童書だが、過酷な内容。穏やかだった生活が過酷なものへと変わっていく描写が丁寧な分、辛かった。少女の出した答えもまた・・辛いものがあった。2016/06/08
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
15
『死の谷間』という映画の原作。核戦争が起きてほとんどの人間が死滅してしまったアメリカ。たまたま逃れる事が出来た集落に生き残り住んでいる16才の少女。そこに辿り着いた防護服姿の男との出逢いと別れ。少女の語りを日記帳で書いている。もしかしたらここが唯一人が生きていける場所で2人しか生き残っていないかもしれない緊張感があった。2020/03/28