出版社内容情報
あの夏、麦畑でチューリップと出会ったのが、はじまりだった。チューリップに支配されたあたしは、天国と地獄のような強烈な日々をおくった…。二人の少女の奇妙な友情と、そして訪れる悲劇的な結末。
内容説明
麦畑の光の洪水の中で、あたしは初めてチューリップに会った。そして、離れられなくなった。あたしたちは二人で、どこへでも行ったし、なんでもした。そう、ウソをつき、友だちを傷つけ、大人たちをからかった。ある日、空っぽの古い家畜小屋に火をつけた。空をなめる大きな炎と黒いけむり、舞い上がる火の粉。あたしは走った。全速力で…。生まれつき邪悪な人間なんて、いない!少女の心の闇を救う手立てはあるか?英国で熱い議論を巻き起こした問題作。ウィットブレッド賞受賞作。
著者等紹介
ファイン,アン[ファイン,アン][Fine,Anne]
1947年、イギリスのレスターシャー生まれ。ウォーリック大学卒業。中学校教師や刑務所教師などを経て、1978年に作家デビュー。現代イギリスを代表する児童文学作家として、高い評価を得ている。主な邦訳作品に、『ぎょろ目のジェラルド』(カーネギー賞・ガーディアン賞受賞/講談社)、『フラワー・ベイビー』(カーネギー賞受賞/評論社)などがある
灰島かり[ハイジマカリ]
国際基督教大学卒業。英国のローハンプトン大学院で児童文学を学ぶ
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
86
評判は知ってたけどこれまで読む決心がつかなかった本。あれこれ考えてたら感想がまとまらなくなった。劣悪な環境で育ち、心が壊れた子どもを救う手立てはあるのか?YAでこういう主題は多いけど、大抵はめでたく終わる。嘘をつき弱者を虐げ暴力に訴えるチューリップと、その世界に取り込まれてしまったナタリーの物語は、とてもリアルで胸苦しい。考えるほどに泥沼にはまっていくようだ。2019/01/08
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
81
狂った世界は子どもの心を黒く塗りつぶしていった。ホテルの雇われマネジャーをしている父の都合で引っ越してきたナタリーは、〈チューリップ〉という名の少女に会った。学校でも外でも二人は一緒に過ごした。そうじゃないと、お互い独りぼっちになってしまうのが分かっていた。彼女はいろんな遊びを思いつく。〈だんまりバカ〉〈おじゃま虫ごっこ〉〈死人クラブ〉、そして〈恐怖の夜〉。ある日、古い家畜小屋に火をつけた。大きな炎が空をなめ、黒い煙が立ち上るとナタリーの心の中でチューリップを繋いでいた糸が切れた……。痛々しく悲しい物語。2015/03/08
☆よいこ
68
恐るべき子供。ほんの悪戯のような顔をして残忍な行動をする少女は本当に怖い。しかし、彼女の行動は生まれつきのものなのか、それとも虐待によって形成されたものなのかはわからない。彼女自身ではなく、彼女に強く心をひかれたナタリーが語ることによって客観的に悪意を読み取ることができた。考えさせられる物語だった。YA。▽自分がナタリーの立場だったらどうするのか。悪戯や悪い遊びの誘いは魅力的だし、虐待されている友達に同情心もある。子供の力では解決しえない大きな問題を、大人は直視するべきだと思う。2019/03/07
星落秋風五丈原
12
周り全てを傷つけるチューリップは、桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のヒロイン・海野藻屑を想起させる。但し海野藻屑は自分を虐待する父親に愛情を抱いていたからこそ嘘をついたが、チューリップのそれは父親の愛情とは無縁である。ナタリーは彼女から精神的にも物理的にも離れることができたが、チューリップ自身の問題は残ったままだ。。どんなに良いことをしようと思っても誉められず、悪いことをしても殴られるだけの彼女がこの後犯罪者の道を歩むことは確実だ。親が子供の最大の理解者で最愛の家族とは限らない。2014/05/02
元素53
11
一言で言うとかなり衝撃的な作品でした。子どもが持つ残酷さに歯止めがかからないまま育っていく少女を同じ年の主人公の目線で語られて行く物語。児童書の区分に入ってはいるものの大人も読むべき内容ではないかと思います。恵まれない環境の中非行に走っていく子どもを、見て見ないふりをする大人こそが罪の意識を背負うべきではないか、鋭く切り込まれたようでどきっとしました。チューリップは今わたしの周りにもきっといる。2014/04/18
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