内容説明
恐ろしい闇の力を秘める黄金の指輪をめぐり、小さいホビット族や魔法使い、妖精族たちの、果てしない冒険と遍歴が始まる。数々の出会いと別れ、愛と裏切り、哀切な死。全てを呑み込み、空前の指輪大戦争へ―。旧版の訳をさらに推敲、より充実して読みやすく美しい、待望の「新版」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
408
これまで、フロドの物語をメイン・プロットと捉えてきたが、ここに来て軌道修正しなければならないようだ。この巻ではまたしても戦乱が描かれ、それに終始する。してみると、フロドの個の物語と対置される形で壮大な「功し」の叙事詩が語られていると見るべきではないのか。この軍記は物語世界全体の空間を支配するし、これまた遠大なまでの歴史を背負ってもいる。しかも、その中心軸にはアラゴルンがいる。すなわち、これはイシルドゥアの裔たるアラゴルンの王としての正当性を語る物語でもあるのだろう。いかにもイギリスらしい作品である。2019/05/06
南北
65
これまでで最も重厚感のある巻だろう。ミナス・ティリスへと兵力が集結しているが、闇の力と戦うには到底足りない。このじれるような感じが続くところが読み所だと思う。やがてローハンの騎士たちやアラゴルンも艦隊を率いて駆けつけようやく希望が見えてくる。ふだん見慣れない漢語を多用することでこれまでと異なった印象を見せているのは良いと思ったが、アラゴルンが王家の名前を「馳夫」にするとしたところでがっくりときた。やはりストライダーにしておくべきだったと思う。2022/09/01
NAO
58
再読。『指輪物語』では、最終的にアラゴルンが王として国に帰還することをもめざしているが、指輪を持ったフロドとガンダルフを中心として旅を始めたとき、ここまで多くの人間たちが登場し活躍する話になると予想できただろうか。怒濤の勢いで戦が繰り広げられ、その勢いのままに息つく暇もなく流されていくが、描写が少し粗い気もする。これだけ大勢いたら、仕方ないことだろうけれど。そして、ついに黒門が開く。2016/06/08
パトラッシュ
56
指輪戦争の山場だが善の勢力側は誰も降伏や外交交渉など考えないし、悪の勢力も死者の首を都に投げ込むなどやりたい放題だ。第二次大戦を挟んで書かれた本書は、連合国と枢軸国の戦争に影響されていたのは明らかだろう。ガンダルフやアラゴルンがチャーチルやルーズベルトで、サウロンやバルログがヒトラーやゲーリングか。ナズグルはロンドンを襲ったV2ロケットを連想させるし、息子を失って自害するデネソールは戦死者遺族がモデルか。第一次大戦で多くの友人を亡くしたトールキンにとって、戦争は身近なものであったはずだから。(9巻に続く)2020/06/11
Willie the Wildcat
56
運命に齎される苦悩との対峙も、通った人生を反映。デネソールの最期も、世継ぎ育成vs.親子の愛情の狭間の顛末か。エオウィンの”狭間”も印象深い。一途な想いが、心技体を超越。故のアラゴルンの手当て時の言葉。興味深いのが「亡霊の誓言」。暗黒には暗黒の義!考えさせられたのが、ガンダルフの「真の勝利」。戦争の意味・意義への著者の問いかけという気がする。蛇足だが、裂け谷の姫君からの贈り物の”棒”って・・・、これまた気になるなぁ~。2015/01/16