内容説明
恐ろしい闇の力を秘める黄金の指輪をめぐり、小さいホビット族や魔法使い、妖精族たちの、果てしない冒険と遍歴が始まる。数々の出会いと別れ、愛と裏切り、哀切な死。全てを呑み込み、空前の指輪大戦争へ―。旧版の訳をさらに推敲、より充実して読みやすく美しい、待望の「新版」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
407
物語の前半は戦いの趨勢が、そして後半ではピピンとメリーとの邂逅が語られる。ここでピピンとのメリーの役割を考察してみるに、彼らはフロドのように召命を帯びているわけでもない。そして、ガンダルフやアラゴルンのような特別な能力を持ってフロドを支えるわけでもない。彼らは、いたって普通のホビットであり、そのことによってこそ物語の中で存在価値を持つ。一方、物語はパランティアの石に象徴されるように、魔術的もしくは錬金術的な原理によって支配されてもいる。こうした落差の大きさが、物語の圧倒的なスケールを保証してもいる。 2019/05/04
藤月はな(灯れ松明の火)
100
第二部の上2はまるまる、セオデン王に謁見できたガンダルフ達一行。サルマンらの甘言に対し、「彼らの言葉は事実とはあべこべだ!」と叫ぶギムリが格好良い。しかし、木の髭達がまさかの大活躍。彼らの能力が凄まじい。そして出会ったのがガンダルフだと分からないピピンが彼らの後ろ姿を見て「王様かもしれない」と呟く場面でとうとう、爆笑。いや~、どうしても暗くならざるを得ない旅路と戦争の中でピピンとメリーは癒しだね^^そしてレゴラスが仔犬みたいにギムリに懐いていてどうしても腐女子のセンサーが反応してしまうんですが気のせい?2017/01/06
南北
64
角笛城の戦いが中心だが、エントたちの活躍やアラゴルンたちとホビットの2人が合流するなど読みどころが多い。中でもサルマンとガンダルフの話し合いはガンダルフが優勢に立っていて、これまでのガンダルフとはひと味違った感じを出している。最後の方でモルドールの魔の手がピピンに迫ったところもよかった。2022/08/10
パトラッシュ
64
面白かったが惜しかった。<蛇の舌>グリマと魔法使いサルマンだ。権力欲に憑かれ、ずる賢く立ち回り、汚い手を遠慮なく使う強烈な悪役かと思いきや、あっという間に叩きのめされてしまったのだから。小説でも映画でも悪が魅力的であるほど物語が面白くなるのは常識だが、壮大な構想の本作にあって悪はなぜかくも卑小かつ薄っぺらな存在でしかないのか。むしろ悪の描写を避けているようだ。本書の欠点は短すぎることとトールキンは言ったそうだが確かにその通りだ。もっと巨悪を登場させてガンダルフやアラゴルンらと死闘を長く展開してほしかった。2020/06/09
NAO
57
再読。アラゴルンが王者の風格を持ち始め、サルマンの術に晦まされていたローハンのセオデン王復活。それにしても、サルマンの手下で間者あるグリマ=「蛇の舌」とは、彼の胡散臭さを見事に表したなんとも絶妙なネーミングだ。サルマン対ガンダルフも迫力あって好きだが、二人でオークを倒し合い、もし無事に戻れたら二人で一緒に旅をしようと約束し合うギムリトレゴラスの友情にほっこりする。2016/05/28