内容説明
イギリスで陶磁器の店を営むアラン・デズランドは、仕事先のコペンハーゲンで、輝くように美しい謎のドイツ娘カリンと知り合い、たちまた恋に落ちる。アランは、過去の一切を知らぬまま、彼女をイギリスに呼び寄せ結婚する。2人の官能的で甘い日々が始まる。当初カリンに不審をいだいていた人々も、やがて彼女の魅力に惹きつけられていく。そして、彼女の思いもかけない大手柄…。幸せな日々は、いつまでも続くかと思われた。しかし、不思議な出来事が2人のまわりに起き始める…。名作『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』のアダムズが、みずから「最高のエロティックな小説」を目指したという、夢と愛と謎と恐怖が錯綜する話題の海外ベストセラー小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
6
ヒロインのカリンという女性は、海のイメージ、もしくは陸に上がった人魚姫のようなイメージを持つ。波間に現れる泡のようだ。美しくありながらも、どこか儚げで、ふっと風に消えてしまいそうな感じがする。彼女は何かを隠していた。自分は罪深い人間であると自覚していた。そこから逃れるようにアランに寄り添った。アランは、カリンという海を泳ぐ魚だった。まさに水を得たと言わんばかりに、彼女によって新たな世界を見ることになる。彼にとって今のカレンは、自分の一部であるかのようになくてはらない存在となっていた。。2010/08/10
平田凡斎
2
ヒロインのカリンの魅力に全てが掛かっている。主人公が穏やかで幸福な生活を綴る自叙伝の形式をとっているために退屈する部分もあるが、所々不穏なエピソードが挟まれるためにそれだけでは済まされない予感を植え付け、読者の注意を惹き続ける事に成功している。カリンとの結婚をきっかけに主人公の店の経営がトントン拍子に良くなって行く様子には「猿の手」式の不安が煽られる。最後の100Pで雰囲気が一変、怒涛の展開。歩きながらだって読んでしまうだろう。正直言って一読して何があったのか全ては判明せず、すっきりしない部分もある。2013/11/18