出版社内容情報
奈良の小さな町で、中学教諭として再出発した久児(ひさこ)。しかし、心に巣くう暗い過去が、幸せになろうとする彼女にブレーキをかける。自分で捨てておきながら、探し続けてきたものとはなんだったのか――愛と再生の物語。
内容説明
自分で捨てておきながら、探し続けてきたもの。胸の奥に閉じ込め、ひとりで歩き続けると決めた―。何かに導かれるようにして見知らぬ駅に降り立った久児は、小さな町の中学校教諭になり、新しい生活をスタートさせた。深い後悔と、自責の念を抱いたまま…。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年、岡山県備前市生まれ。同志社大学法学部卒業。大学時代から京都で暮らし、その後、インド、東京を経て、1992年からニューヨーク州在住。一般文芸、児童書ともに著書多数。サンリオ「詩とメルヘン」賞、「海燕」新人文学賞、島清恋愛文学賞、ボローニャ国際児童図書賞、小学館児童出版文化賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
小手鞠 るい、2作目です。著者の実体験に基づく、女性国語教師の物語、感動作でした。本書の主人公のような教師が、子供達に未来地図を示してくれたら、日本の将来も明るいと思いますが・・・ http://www.harashobo.co.jp/book/b631756.html2023/10/30
hiace9000
162
小手毬さんの描く女性像、その輪郭を縁取るご自身の投影ー。「読書感想文は作者への手紙」と久児が生徒に語るくだりがあるが、本作に込めた恩師へのオマージュと、主人公や作者の葛藤と煩悶、決意と勇気を読み手は受け取り、胸中で反芻し読後の心地よい余韻に浸りレビューの手紙を綴る。社会派筆同様、ロマンス筆も一流。"冴え返り 冴え返りつつ"進む、人を愛することに躊躇する心理描写の切なさには胸締めつけられる。中学校国語教師という仕事の顔、直巳の前での一女性としての顔、古今の名句も折り込み、美しい日本語を愛で満たす名著である。2023/12/23
いつでも母さん
155
久しぶりに私の思う小手鞠るいを読んだ気がする。愛と再生の物語と帯にある。離して(離されて)初めて得る感情ってあるよね。自らが求めるかどうかは別にしてではあるけれど。この中の詩と俳句はどれも良かった・・子供たちも直巳も好い。久児(ひさこ)は出会ったんだね。これまでも今も。どんなに苦しくても彼女の人生に介する全てがあればこそなんだ。読み友さんのレビューにもあったが「出逢いは宝物」そんな事を感じて読み終えた。2023/11/05
ゆみねこ
94
国語教師を目指し花屋と塾講師のバイトを掛け持ちしながら頑張っていた赤木久児(ひさこ)。銀次との結婚生活を諦め、ふと降り立った奈良の小さな駅。その町で中学教師になり愛する人に出会うが、彼の想いに応えることの出来ない久児には重い過去を抱えていた。久児の生徒たちに向き合う姿、素敵な授業。この人に幸せになって欲しいと思いながらの読書は、最後感動でページを閉じた。とても良い本。2024/01/09
ベイマックス
90
小手鞠さんと言えば、ニューヨーク州のウッドストックも登場する恋愛小説ってイメージがあります。この本を読み始めは、舞台が日本だし、教師の授業風景であったり、生徒との交流が描かれていて、違うジャンルの作品なのかなと思っていました。でも、そこは小手鞠作品。女性教師の過去や恋愛に話が移っていく。そして、その恋愛がとても純粋に、とても繊細に、とても儚く語られている。松尾芭蕉の句が登場したり、いい言葉も紹介されていて、読みやすくもありよかったです。ハッピーエンドじゃないけど、それもまた未来へってことなのでしょうかね。2024/01/20