出版社内容情報
「第一次大戦により戦争の質は変化した。クラウゼヴィッツでは読み解けない」としたルーデンドルフの歴史的戦略論を
最先端の日本人研究者による完全新訳。また詳細な解説論文を付した。
政治と軍の関係、財政や国民参加の問題など、現代でもなお通ずる論点が見逃せない。
内容説明
クラウゼヴィッツ批判から生まれた新世紀の国家間戦争の姿を予見した古典的名著、新訳決定版!最新の研究成果を反映した注釈と現代的意義まで踏まえた本格解説文を収録。
目次
第1部 総力戦(総力戦の本質;国民の精神的団結性―総力戦の基礎;経済と総力戦;軍の強さと本質;軍の構成要素とその投入;総力戦の遂行;将帥)
第2部 解説(総力戦思想形成の背景;クラウゼヴィッツ思想との関係;総力戦としての第二次世界大戦に向けて)
著者等紹介
ルーデンドルフ,エーリヒ[ルーデンドルフ,エーリヒ] [Ludendorff,Erich]
1865‐1937年。プロイセン生まれ。ドイツの軍人、政治家。第一次世界大戦後半に参謀本部次長。その軍事理論、戦略構想は日本の石原莞爾らにも影響を与えた
伊藤智央[イトウトモヒデ]
現在、ボン大学大学院博士課程在籍。学歴、東京大学卒業(法学士)、ジーゲン大学大学院修了(歴史学修士)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
unflyable
2
総力戦を戦うには「軍と国民との精神的融合」と「経済の奉仕」を必要とし、究極的には「政治は戦争遂行に資するものでなければならない」としたもの。冷戦以降の歴史を経た上でいえることだが、一見合理的なシステムを構築できるようにみえるが実際やってみると酷い不合理が発生してしまう理論だといえる。ユダヤの陰謀論を諳んじたところで実態の無い事柄に対して人間は危機感を長時間維持することはできないし、身の丈に合わない軍拡をしても旧式化した兵器の維持費で更新や弾薬取得すらままならないお粗末な事態になる。バランスをどうすかだ。2017/09/22
Mealla0v0
2
戦争の思想史において絶大な影響を誇ったルーデンドルフの書が最新の研究を踏まえた上で訳出されたのが本書。国民=人的資源を最大限投下することで遂行される総力戦。それを推進したルーデンドルフは、クラウゼヴィッツが戦争をあくまで政治の延長=外交と見做していたのとは反対に、戦争を国民全体の生存維持を懸けた民族意志の発露と見做し、戦争のもとに政治や経済が従属化されるべきだと説いた。本書には人種主義が貫徹されており、生を戦争化する様が見られる。また、伊藤智央の解説は本編の内容紹介以上に様々な研究をフォローしていてよい。2017/07/25
水無月十六(ニール・フィレル)
1
ルーデンドルフの著書、『総力戦』の訳と、それと同程度の紙幅の解説による本。日本の石原莞爾にも影響を与えたという軍事理論、戦略構想は、解説を含めても一読で全部を把握するにはこちらの頭が足りなかった。悔しいので再読したい。当時の世界観を反映というか、ルーデンドルフをはじめ多くに共有されていたであろうユダヤ人への陰謀論的表現は、その後のドイツを知っている身からすればもはや恨み節に近く感じるが、それが当時の見方だったということは、史料にあたる上で忘れてはならないだろう。2022/01/04
畝傍
1
ユダヤ人・国際金融資本陰謀論(執筆時期には兎に角流行していた)と、軍事独裁体制を率いた著者の自己弁護の強さに辟易するが、それを除けば良著であると思う。クラウゼヴィッツ理解に関しては附記解説で疑問が呈されているものの、ともすれば物資や人的資源に関してイメージしがちな「総力戦」という語に、精神・知的動員を強く意識する(これも第一次大戦の独 の敗北、特に精神的なものによるだろう)の教訓だろう。2017/05/23
日系フサリア人
1
後ろについている解説がとっても良かった。