内容説明
碑文の読み方を知ると、美術館や遺跡がもっとたのしくなる。碑文の重要性と楽しさをはじめて明らかにした好著。
目次
序―歴史を塗りかえる碑文
石切職人とその技術
碑文の解読法
碑文の年代推定
碑文の残存
記録と出版
碑文における皇帝
地方と社会
ローマへと続く道
ローマ帝国の運営
軍隊と前線
神々の神殿と祭壇
墓石と記念物
交易、経済と商業
POPULUSQUE ROMANUS
キリスト教
最後のローマ帝国
結論―碑文の価値
著者等紹介
ケッピー,ローレンス[ケッピー,ローレンス][Keppie,Lawrence]
グラスゴー大学ハンター博物館の古代ローマ史と考古学の教授
小林雅夫[コバヤシマサオ]
早稲田大学文学部教授。「早稲田大学地中海研究所」(プロジェクト研究所)研究員。古代ローマ史専攻
梶田知志[カジタトモユキ]
早稲田大学文学研究科博士課程在学、古代ローマ史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まさる
4
日本では碑文を史料として扱うことは少ない、よって碑文に対する学術的注目は専門家はともかく、一般人には縁が遠いものであると感じる。しかしヨーロッパにおいては碑文は当時の政治、経済、軍事を知るのに重要な史料となりうる。本著は古代ローマを碑文の視点から考察した書物であり、これが日本における碑文の研究をより発展させることを期待したい。本著は碑文のもつ大きな可能性を解りやすい口調で語られており、非常に読みやすい。オススメの書である2015/11/29
富士さん
3
再読。多くの人の手を経て、時代ごとの解釈を免れない古典とは違って、碑文というのは当時から直接現れた資料で、それを読み解くということは古代ローマ人の常識や日常を仮にでも共有しなければなりません。そのため、必然的に碑文を読むという行為は当時の生活を知ることとなり、本書の題名は見事な意訳になっていると思いました。古代中国史は発掘資料が歴史を書き換えるほどになっていると聞いていましたが、古代ローマ史の碑文もかなりの影響があると知って、歴史というものは時代が近くなれば鮮明になるというのは幻想なのだと改めて感じます。2018/03/16
AsK
2
碑文学というものが西欧ではきちんとした学問として発展しているらしい。本書は碑文を読む入門書ともいえる。碑文の見方、碑文特有のラテン語の省略形について。碑文を読み解いて主に古代ローマの歴史を探ることをメインとしているので、扱う碑文の言語は主にラテン語。ローマの生活史とは独立してローマで発掘されたカタコンベに使用されるキリスト教の碑文も一部紹介されている。キリスト教の碑文はヘブライ語、ギリシア語、ラテン語で書かれているがここではラテン語のものに絞っている。2012/02/03
きゅー
1
これもやはり私が求めていたものではなかった。でもこの内容に興味のある人には、詳しくて読みやすいしいい本だろうと思う。2022/05/23
たかみりん
1
原著のタイトルは"Understanding Roman Inscription"。タイトル通り古代ローマの碑文学についての入門書となっており、前半は研究の前提となる基礎知識(略字・記号についてや、碑文のカテゴリー、入門書や選集の存在、記録方法など)、後半は墓碑、奉献、軍隊や交易、キリスト教といった生活の各場面に登場する碑文の具体例を引きながらの解説となっている。文学史料とは一味違った、民衆の生の声が垣間見えるのが面白い。写真や図版も豊富に掲載あり、出土した碑文の欠片から全体像を復元する様には驚かされる。2014/06/09