内容説明
レディ・スーザンと近親者たちを中心に集まった屋敷での夕食会で、ある男がいった。「ひとを消すことができる、とびっきりの呪文があるんだ」そして食後の気晴らしで始まった降霊会の最中に、若い女性―シシリー・ヴァーノンがほんとうに消えてしまったのだ。消えた理由もわからなければ消えた方法もわからない。やがてある不可解な事実が浮かび上がって二転三転…。稀代の名手が「読者に挑戦」した本格推理は、まさしく“幻の長編”の本邦初公開。
著者等紹介
バークリー,アントニイ[バークリー,アントニイ][Berkeley,Anthony]
1893~1971年、イギリス。オクスフォード大卒後、1925年に『レイトン・コートの謎』でミステリ作家としてデビュー。ディテクション・クラブを創設するなど、英国ミステリの中心的存在となる
森英俊[モリヒデトシ]
1958年東京都生まれ。早稲田大学政経学部卒業。翻訳家、評論家。ミステリ洋書専門店Murder by the mailを運営。編著書に日本推理作家協会賞受賞作となった『世界ミステリ作家事典(本格派篇)』など
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
32
バークリーの「幻の作品」とも言われた本書。「人を消せる」という名目で行われた降霊会で一人の女が本当に消えてしまった。暗いとはいえ、衆人監視の中、一瞬でなぜ、どのように、そして誰の手によって?バークリーお得意の癖のありすぎる登場人物たちから徐々に分かってくる事情によって謎が増えてゆくしっかりとしたミステリのお手本本。ピーター卿シリーズでのハリエット・シリーズを彷彿させるラブロマンスもありますよ^^2013/09/15
紅はこべ
20
貴族のお屋敷のパーティーで行われた降霊会で美女が消えるという、英国ミステリの典型的設定。主人公は探偵業より、自分の恋愛に気を取られている。屋敷の女主人や従僕がいい味を出している。2008/02/07
星落秋風五丈原
15
ヴィンテージシリーズ。「ひとを消すことができる、とびっきりの呪文があるんだ」 余興を始めた降霊会のさなか、若い女性がほんとうに「消えて」しまう。著者の死後発掘されたロマンスあふれる本格推理。 2005/03/20
bapaksejahtera
11
1927年と比較的初期作品。ホームズ等従来スタイルの探偵小説に異を唱えた実験的な作品の多かった著者が、デイリーミラーという全国紙の連載依頼を受けて書いたのが本作。よって若い主人公の恋愛模様や成功譚と、バークリー作品としては異なった色合いとなっている。更に著者の名義上の混乱や単行本出版社が「貸本屋」系統のだった事もあり、本作は長く「幻の作品」として埋もれていたという。「紳士」階級の青年が財産を失い、家僕として他の屋敷勤めをするうち生ずる失踪事件を解決する筋で、ややもたもたした処があるが読めない作品ではない。2022/07/27
timeturner
9
初バークリー。もっと厭な感じの話を書く人だと思ってたら全く違った。軽やかでユーモアたっぷり、気持ちのいいハッピーエンディング。古きよき英国の中上流階級をおちょくってはいても否定はしていない。余計なことは忘れて楽しめるエンタメ作品だった。2021/11/20