内容説明
数奇な運命にあやつられるかのように革命前夜、動乱のロシアで聖画=イコンを学ぶりん絵画への情熱と葛藤をへて日本を代表するイコン画家に―。しかし、その代表作はニコライ堂とともに炎の中で天に昇ってゆく…。日本最初の女流洋画家情熱と信仰と自立の生涯。
目次
茨の道
工部美術学校
ニコライの導き
途上にて
天と地
女子修道院
白夜
美術アカデミー
花園
出エジプト
晩鐘
ゲッセマネ
復活
馬小屋のなかで
無名の彼方に
大津事件
昇天
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
27
幕末に茨城県笠間に貧乏士族の娘に生まれ、「絵を学びたい」と上京するも、茨の道の中で苦闘する(特に経済の面で)中、旧藩主・牧野貞寧の学費援助を得て、工部美術学校に女子第一回生として入学。その後もロシアの女子修道院で苦闘しながら、イコン画家として生涯を全うした山下りんの伝記。「ムリーリョの『聖母被昇天』も好きな作品」という記述で、山下りんのイコンをより理解できた。小説のような感じで読みやすい。ただ、なぜ著者が山下りんに興味を持ったか、あとがき等が欲しかったのと、帰国してからにも、もう少し頁を割いてほしかった。2019/10/15
OZ
9
神田駿河台にある「ニコライ堂」(東京復活大聖堂)の建設当初の主教 ニコライ大主教の勧めによってロシアに渡り、イコン(宗教聖像画)を学んだ女性のお話。 今はニコライ堂にあったとされる山下りん(洗礼名:イリナ)作のイコンは関東大震災の際に消失したそうだけど、日本各地の正教会には彼女が描いたイコンが残っているそうだ。 2021/03/07
nob sat
1
明治初期、茨城笠間の下級藩士の娘 りんが、絵を描きたいと工部美術学校に入学、その後、ハリストス教会のイコン画家養成のため、ロシアのサンクトペテルブルクに留学する。イコンは祭壇の一部であり、自己表現の手段でないため、若いりんは苦悩していく。明治時代の女性は、りんもそうだが、山本八重や山川捨松のように、、自分の知識欲にしたがってストレートに行動する。まるで映画のようだが、このような人たちが確かにいたのだ。山下りんはまだ無名だが、そのうちドラマになるだろう。りんがニコライ皇太子のために描いた絵が、彼女が留学時代2013/02/24