出版社内容情報
これまでの地域産業振興政策の目的は、地域の経済活動の主要な担い手である中小企業を主たる対象に、それらの自律的な発展を促進し、地域の産業の内発的発展に結びつけることであった。地域の既存の企業の振興が、中心テーマとなっていたのである。
しかし近年は、人口減少の時代となり、地域経営の視点が問われるようになった。中小企業の支援優先ではなく、地域のあらゆる主体同士の共創、資源の有効活用によって、自ら税収、収入を増やし、地域の豊かさ、暮らしやすさをいかに高めるか、それによって、「選ばれる自治体」になれるかどうかが、自治体に問われている。つまり、住民の日常生活を支援する産業の維持、住民の生活の満足度を高める仕組みづくりが求められているのである。インクルーシブ社会(共生社会)におけるコミュニティ・ビジネスのあり方について検討する意義が高まっていると言えるだろう。
本書は、多彩なバックグランドを持つ研究者たちが、地域経営戦略の視点に立って、地域の産業振興について多角的に議論している。具体的には、地域資源を最大限に活用したブランディング、リノベーションまちづくり、ライフシフトを支援する持続可能なソーシャルビジネス、さらには、産業と生活を支えるサプライチェーンとしての物流問題、また、これまで地域との関係が希薄と考えられていた、グローバル・ニッチ型企業の地域貢献、コンテンツツーリズム、着地型観光等にも着目し、生活(暮らし)と産業が融合するプラットフォーム形成に向けた、ポテンシャルを探求している。そして、自治体は、プラットフォームを構成する、民間企業や各種団体、多様な価値観を持つ住民や学生たちとともに、満足度の高い自治体になるための活動に積極的にコミットすることが求められていると主張する。
自治体の産業振興を地域の成長戦略に位置付けて、シナリオを構築しており、従来型の産業振興論とは、一線を画す、「都市経営戦略論」となっている。自治体の産業振興担当者はもちろん、自治体との協働によるビジネスを視野に入れている企業や団体の方々にも、是非、手に取っていただきたい。豊かで暮らしやすい地域になるための、コミュニティ・ビジネスのヒントが得られるはずだ。
内容説明
人口減少の時代、地域内でどう稼ぐのか?コミュニティ型マーケティングやジョブ理論に基づき、多様な主体と価値共創ネットワークを構築。集積論や中小企業政策中心の従来型議論とは一線を画す、生活と産業を融合させた、持続可能な自治体経営のための戦略的シナリオを示す!
目次
問題意識と本書の構成
第1部 地域産業振興戦略の今日的意義と商工業の新たな振興視点(地域産業政策研究の系譜と自治体における計画の位置づけ;日本のGDPの成長可能性;グローバル・ニッチ型製造企業の地域への関与;地域商業の変遷と持続可能なまちづくりのあり方)
第2部 地域企業の稼ぐ力を高める自治体の産業振興戦略(事業承継の現状・課題と自治体の支援策;アニメ聖地巡礼と地域マネジメント―佐賀県唐津市と山梨県身延町を事例として―;観光資源の活用による着地型観光の推進に向けた課題;基礎自治体の物流政策;地域資源活用の取組と事業評価―東京都「Buy TOKYO推進活動支援事業」を事例として;地域企業の価値づくりに向けたローカル・プラットフォーム戦略)
自治体の戦略観が問われる産業振興政策
著者等紹介
福田敦[フクダアツシ]
関東学院大学経営学部教授。青山学院大学国際政治経済学研究科国際ビジネス専攻修士課程修了。東京都庁(商工指導所、産業政策部)、関東学院大学経済学部専任講師・准教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 和書
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