出版社内容情報
日本に亡命したインド独立の闘士、R.B.ボース。アジア解放への希求と日本帝国主義との狭間で引き裂かれた懊悩の生涯。
【著者紹介】
1975年大阪生まれ。京都大学大学院博士課程修了。現在、北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院准教授。専門は南アジア地域研究、近代政治思想。主要著書『父 ボース』(編・解説)、『パール判事』ほか多数。
内容説明
1915年、日本に亡命したインド独立の闘士、ラース・ビハーリー・ボース。新宿・中村屋に身を隠し、西欧支配からアジアを奪還するため、オピニオン・リーダーとして活躍する。しかしアジア解放の名の下、日本軍部と皮肉な共闘関係に入っていく…。「大東亜」戦争とは何だったのか?ナショナリズムの功罪とは何か。
目次
第1章 インド時代
第2章 日本へ
第3章 「中村屋のボース」
第4章 日本での政治活動の開始
第5章 苦難の道へ
第6章 「大東亜」戦争とインド国民軍
終章 近代日本のアジア主義とR・B・ボース
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
17
前半のテロや日本への密航、逃亡劇はまるで映画のよう。母国インドが英国から独立するため唱えた「アジア主義」が、結果として大東亜共栄圏構想につながったのは不本意だったでしょう。恥ずかしながらこの本を読むまで世界史で習ったもう一人の(チャンドラ)ボースと勘違いしていました。読後はみなさん、きっと中村屋のインドカリーが食べたくなるはずww2015/05/31
shouyi.
5
中島岳志さん20代の労作である。中村屋のカレーはかつて新宿で遊ぶ時、定番の食事だった。「インドカリー」の響きが好きだった。まさか、ボースという人間とかかわりがあるとは知らなかった。読んでみて、描きかたの難しい人だったのでは思った。それだけ中島さんの苦心がしのばれた。2020/09/22
えんさん(연싼)@読書メーター
2
インド独立のために日本に渡り、自国独立のために大日本帝国と手を結ばなければならなかった運動家、R・B・ボースの評伝。参考になるというよりは、読み物として面白かったです。特に亡命中に滞在していた中村屋で、植民地支配を知ってもらうためにボースが「インドカリー」(「カレー」じゃないのが重要)を出していたのは食と運動を考えるにあたってユニークでした。2017/01/17
うちこ
2
「インドカリーの中村屋」のルーツとなったR・B・ボースの活動録。大東亜戦争の時代、日本の帝国主義のムードがどんなものであったか、亡命してきたインド人革命家が鮮やかに指摘する言葉の数々に息をのみます。正義はかかげてもその奥に思想がなかったり、「敵の敵は味方」という思慮の浅い動機であったり、大切な指摘を感情でスルーしていたり。ドラマチックなストーリーが続くなか決して感傷に浸らず、そのなかに潜む「目的遂行のために思考停止する人間の脆さ」への指摘を忘れない、すばらしい内容です。2014/07/25
いのふみ
1
ボースはインテリの論客だと思っていたが、ガチのテロリストだった。インド独立を切に願うあまり、当時の状況や頼れる組織に限りがあったにせよ、日本軍の右翼に縋ってしまったこと、晩年に精彩を欠いたのは残念だ。しかも、右翼やアジア主義者が、ボースの思想に共鳴したり、理解しようとしていたのではなく、浅はかにも、「行動」する者としてのボースやそのイメージしか見ていなかったのも杜撰だ。中村屋のインドカリーにもっと複雑な味わいがしてもくるようだ。2020/08/14