内容説明
大戦前夜にフランスから帰国し、圧倒的なテクニックと知的で優雅な演奏スタイルで、衝撃的デビューをとげた天才少女ピアニストは、日本の音楽界に何をもたらしたのか。戦後日本のピアノ界をリードし続けた安川加壽子の実像に迫る。
目次
黒鍵のエチュード
巨星墜つ
パリから来た天才少女
パリの修行時代
戦争と平和
奇跡を生むテクニック
より強く、より速く
ロング・ランとしての演奏人生
家庭人安川加壽子
果実の熟するごとく
六十一歳の挫折
翼をたたんた天女
著者等紹介
青柳いづみこ[アオヤギイズミコ]
ピアニスト・文筆家。東京芸術大学大学院博士課程修了。演奏と執筆を両立させる希有な存在として注目され、5枚のCDが『レコード芸術』誌で特選盤となるほか、『翼のはえた指』(白水社)で吉田秀和賞、『青柳瑞穂の生涯』(平凡社ライブラリー)で日本エッセイストクラブ賞。大阪音楽大学教授、日本ショパン協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
20
バイエルもチェルニーもハ長調から始まるが、実はハ長調が一番弾きにくい。指を伸ばした状態なら、短い指が白鍵、長い指が黒鍵に乗るのが自然で、たとえばロ長調から練習することをショパンは勧めた(彼の曲に♯や♭が多い理由も納得できる)。この奏法はピアノ教育界の主流にはならなかったが、ショパンからドビュッシー、ラザール・レヴィを経て安川加寿子に受け継がれたと著者は考える。安川のこの奏法の受容がほとんど無意識な少女期であること、安川の日本語が拙かった(仏語の方が堪能)ために意識化・言語化に苦労したとの指摘が興味深い。2015/07/15
Fumihiko Kimura
0
稀有なピアニストだった安川氏の生涯を、同じくピアニストとしての演奏論を織り込みつつ丹念にかつ自然に描く。そして、最後の最後に至って、筆者が発した楽壇への言葉は、蓋し重い。これまた稀代の音楽評論家吉田秀和が、評伝自体の解説としては誠に見当違いの文章を寄せているが、むべなるかな。2013/07/28
やくも
0
幼少女期を第二次大戦前のパリで過ごし、15才でパリ音楽院を卒業。19才で帰国以来、終生活躍したピアニストの評伝。エピローグには、きっと弟子の想いが集積されている。同じくフランス帰りの演奏家の門下として共感しっぱなしの一冊。2020/01/28
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