出版社内容情報
制度で読み解く帝国史
オスマン帝国は十四世紀初めにアナトリア辺境に現れ、一四五三年のコンスタンチノープル征服を契機に体制を確立した。スルタンを頂点とする統治は、イスラム法と世俗法を並立させ、奴隷出身の官僚や軍人を登用し、宗教的少数派を共同体として包み込むなど、多様な人々と文化を制度に組み込んだ。
本書は従来の概説とは異なり、国家体制・社会・経済に踏み込み、硬直化や経済の特質、民族・宗教の多様性と文化の広がり、十九世紀の社会変容に光を当てる。さらにヨーロッパ史と一体的に描き出し、「似て非なる」発展の姿を示すことで、単純な衰退論やヨーロッパ中心の見方、ナショナリズムによる解釈を退ける。一九八〇年代以降の史料公開やデジタル化による研究の進展を背景に、オスマン帝国史の新しい姿と今後の可能性を提示する意欲的な一冊である。
【目次】
第一章 国の誕生と飛躍
1 判然としない、その起源
2 ベイリキから国家へ
3 コンスタンチノープル征服
第二章 帝国の誕生
1 帝国の夢の始まり
2 権力の新しい形
3 法整備・支配権・絶対主義
第三章 バランス・オブ・パワー
1 支配による多様性の管理
2 王家をデザインし直す
第四章 黄金の世紀?
1 帝国の未来
2 世界帝国へ
第五章 権力構造
1 他に類を見ない帝国
2 素晴らしき硬直化?
第六章 経済
1 脆弱で統制された経済
2 国家の重み
第七章 社会と文化
1 多様で分断的な社会
2 文化・芸術への影響
第八章 近代化への挑戦
1 危機と変革
2 困難のなかの帝国
3 嵐の前の静けさ
第九章 結末のない終焉
1 ヨーロッパへの余儀なき接近
2 西洋化への熱狂
3 後退と崩壊
補論 オスマン帝国の歴史――なぜ? どのように?
監修者あとがき
参考文献
原注