出版社内容情報
恐怖はいつの間にか、もうそこに。
1930年代、ワイマール文化が咲き誇るベルリン。語り手ウィリアムはアーサー・ノリスと知り合った。立派な身なりをした教養人で貿易業をしているという。ノリスを介しウィリアムは癖のある面々と出会う。ノリスは贅沢な乱痴気生活をしては困窮して姿を消し、次に現われたときには大金を手にしている。彼はまた、多くのベルリン市民と同じように政治にも関心を見せた。ある時、ウィリアムは彼に代わり、取引先に知り合いの男爵を引き合わせるよう頼まれる。だが実は、ノリスの取引先とはさる情報機関だった……。
ノリスの滑稽な言動には毎回笑わせられるが、本書は単純な喜劇に終わらず、奥深い。共産党やナチスに対する市民の熱狂が渦巻いていた当時、ベルリンに暮らしていた著者イシャウッドは、1935年に本書を発表した。ナチスによる敵対者への残虐な弾圧が広く知られる前にその危うさを描きこんだ鋭さには驚くばかり。熱狂の影で進む恐怖はいつ、どこの国でも起こりうる。いま我々もノリスを笑っていられるだろうかと背筋が寒くなる。
ナチス台頭前夜の狂乱の日々を鋭い洞察力で描く、イシャウッドの予見的傑作、新訳で登場。
内容説明
1930年代、世界の政治・文化の中心、国際都市ベルリン。ワケありな紳士ノリスは東奔西走で大忙し。ナチス台頭前夜の狂乱の日々を描く傑作、新訳で登場。
著者等紹介
イシャウッド,クリストファー[イシャウッド,クリストファー] [Isherwood,Christopher]
1904‐1986。イングランドの地主階級の家庭に生まれる。ケンブリッジ大学在学中から小説を書いていたが、退学してロンドンで家庭教師などをしながら本格的に執筆活動に力を入れる。28年、第一長篇All the Conspiratorsを発表後、幼馴染W・H・オーデンの誘いで、ベルリンに向かう。ワイマール文化華やかなりしベルリンでの経験を基に書いた『いかさま師ノリス』(1935)とGoodbye to Berlin(1939)で不動の地位を確立(後年、2作合わせて“タイム”誌が選ぶ100冊に選出される)。後者はミュージカル・映画の名作『キャバレー』にもなった。また、文学界の新潮流「オーデン・グループ」を形成し注目された。39年、オーデンと共に渡米。カリフォルニアで出会ったヒンドゥー教に傾倒。46年、アメリカに帰化。86年、カリフォルニアのサンタモニカにて逝去
木村政則[キムラマサノリ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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