出版社内容情報
「破壊の記憶」を検証する
1997年のチューリヒ大学における講演で、「第二次世界大戦でドイツが被った空襲体験は戦後のドイツ文学によって表現されておらず、次世代にもなんら継承されていない」と主張して、ドイツに議論を巻き起こし、その後のドイツ文学にも大きな影響を及ぼした論考「空襲と文学」、戦後ドイツの文学界をリードした作家アルフレート・アンデルシュを、免罪と自己正当化の文学として厳しく断罪する「悪魔と紺碧の深海のあいだ」、ナチスに抗してレジスタンス運動に参加し、アウシュヴィッツ強制収容所を生き延び、戦後に迫害の体験を考察したエッセイ『罪と罰の彼岸』を発表、しかし自ら命を絶った作家ジャン・アメリーを論じた「夜鳥の眼で」、ナチスの迫害を逃れて亡命、戦後はフランス革命を題材にした戯曲『ジャン・ポール・マラーの迫害と殺害』、フランクフルトのアウシュヴィッツ裁判を傍聴して書かれ、国内での一斉上演によってドイツを震撼させた『追究--アウシュヴィッツの歌』などの記録演劇で名高い作家・劇作家のペーター・ヴァイスを論じた「苛まれた心」の四篇を収録。細見和之氏の解説「破壊に抗する博物誌的な記述」を巻末に収録。
内容説明
ドイツが第二次大戦で被った惨禍は、戦後の文学によって表現されることがなかった。ジャン・アメリー論、ペーター・ヴァイス論を通して、「破壊の記憶」を検証する。
目次
空襲と文学―チューリヒ大学講義より
悪魔と紺碧の深海のあいだ―作家アルフレート・アンデルシュ
夜鳥の眼で―ジャン・アメリーについて
苛まれた心―ペーター・ヴァイスの作品における想起と残酷
著者等紹介
ゼーバルト,W.G.[ゼーバルト,W.G.] [Sebald,W.G.]
1944年、ドイツ・アルゴイ地方ヴェルタッハ生まれ。フライブルク大学、スイスのフリブール大学でドイツ文学を修めた後、マンチェスター大学に講師として赴任。イギリスを定住の地とし、イースト・アングリア大学のヨーロッパ文学の教授となった。散文作品『目眩まし』『移民たち 四つの長い物語』『土星の環 イギリス行脚』を発表し、ベルリン文学賞、J・ブライトバッハ賞など数多くの賞に輝いた。遺作となった散文作品『アウステルリッツ』も、全米批評家協会賞、ハイネ賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。2001年、住まいのあるイギリス・ノリッジで自動車事故に遭い、他界した
鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学教員。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。