出版社内容情報
スターリンから直に由来する新公開史資料に基づいた画期的な大作。ロシアの世界的権威による、学識と読みやすさを兼ね備えた圧巻の書。
内容説明
ソ連崩壊後30年、真に一新されたスターリン像の提示に挑む!スターリンに直接由来する新公開の文書館史資料に基づき、独裁者の全貌に肉迫し、彼が生きた時代を解き明かす。ロシアの世界的権威による、学識と読みやすさを兼ね備えた、画期的な大作。
目次
第1章 革命以前
第2章 レーニンの陰にあって
第3章 彼の革命
第4章 テロルと差し迫る戦争
第5章 戦時下のスターリン
第6章 大元帥
著者等紹介
フレヴニューク,オレーク・V.[フレヴニューク,オレークV.] [Khlevniuk,Oleg V.]
1959年生まれ。モスクワ大学歴史学部教授。ロシア連邦国立文書館に長く勤務し、1930年代のソヴィエト・ロシア史およびスターリン研究の第一人者にして、彼の時代の史資料をもっとも閲覧している世界的な権威
石井規衞[イシイノリエ]
1948年、東京生まれ。東京大学名誉教授。近現代ロシア史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
214
流血を辞さないやり口はレーニンに倣ったもの。テロルという武器を片手に、農村の集団化と都市の工業化を強行して膨大な餓死者を出す。その責を負わせた高官らを粛清し、やがて死の網を市民へと拡げる。仏を征服したヒトラーとの同盟を、軍事力で叶わぬと見たスターリンは真剣にを考えたらしい。が、ヒトラーはそんなに甘くはなかった。独ソ戦前半の判断ミスや、兵士を脅し、無駄死にさせた失敗を取り繕いつつ、戦後のイデオロギー支配から反ユダヤ主義へ。これほど巨大な国を、秘密警察を使って国民へのテロルを続けるだけで統治できたとは驚きだ。2021/12/23
星落秋風五丈原
23
スターリンの死の様子を挿入しながら彼のこれまでの歴史を辿る伝記。2022/07/10
MUNEKAZ
18
ロシア人研究者によるスターリンの伝記。回想録などに拠らず、ソ連崩壊後に公開された新出史料を駆使して、独裁者を描く。面白い逸話やいかにもな陰謀論は無いが、病的なまでの猜疑心や破綻した家庭生活、無慈悲な権力維持の手法など、スターリンの統治と生涯を特徴づけるポイントが冷静に論じられている。内政での粛清を含む果断さと外政での慎重さが対照的だが、ある意味で「臆病」というのが共通点か。著者は現代ロシアにおいて、ソ連時代への郷愁とスターリンを英雄視する見方が強まっていることに危機感を覚えているのが何よりも印象的である。2022/03/08
健
16
近年公開された文書に基づき、俗論や陰謀説と思われるものを極力排除して書かれたスターリンの実像。共産党内の権力闘争のみならず、国際政治的な動きにも触れられて充実した内容となっており、時間を要したが興味深く読み進めることができた。サイモン・セバーグの著書と比較すると簡潔だけどより多面的に描かれている気がした。なお、スターリン死亡直後から、極端な計画経済の緩和、拷問の廃止、「政治犯」「経済犯」とされた人々の釈放等々ソ連全体に明るい兆しが出てきたようなので、その後どうなっていったのか別の本で追ってみたい。2021/07/25
にしの
11
ロシア人歴史家によるスターリン伝。新しい知見に基づく研究ではないが、よく知られたスターリンの伝説や陰謀論を的確に打ち崩す論調が良かった。停滞するロシア社会で虚像のスターリンが復権していることへの作者の危機感が感じられる。 今後スターリン研究の新しい発見はあまりないと思うが、研究はこれまで以上に事実をベースにした有象無象の贅肉取りになっていくのだろう。こういう著作を読むたびに文書のアーカイブスとそのアクセスの重要性を感じる。それらがなかったとしたら、神話と陰謀説の上に立つスターリンしかわからないのだから。2021/08/06